帰り道
私は有岡さんと家まで向かう
帰り道の途中のコンビニ
有岡さんがちょっとよっていい?って言うからコンビニによった
とくに用もない私は外で有岡さんを待つ
……………………ん、この匂い…
嗅いだことのある匂いに嫌な記憶が掘り起こされた
私は怖さと嫌な気持ちでいっぱいになって走り出した
とにかく必死で有岡さんの声も聞こえなくて
必死で家まで走った
久しぶりにあんなに走ったから家の前の階段で限界を超え、倒れ込んだ
それに気付いたのか、玄関が開いて
お兄ちゃんが出てきた
息切れと気持ち悪さで声が出ないことを
わかってくれたのか、優しく手を差し伸べて支えてくれて
私はソファに座ってお兄ちゃんを待ちながら
息を整えようとする
けど、あの記憶が頭から離れなくて
胸がぎゅっと引き締まる
まだ上手く呼吸が出来ないのがわかったのか
お兄ちゃんはゆっくり息を吸ってと背中を優しくさすりながら言ってくれた
有岡さんは、さっきあった出来事を全部話した。それを聞いて頷いたお兄ちゃんは「君が嫌だったから逃げ出したとか?」って言った
そしたら有岡さんはしゅんとした顔で
「やっぱ、男が苦手な人に近づきたいと願うのはダメなのかな」って言うから、私は必死で答えた
そう答えるとお兄ちゃんは真剣な顔をして
「何があった?」と聞いてくれた
それを聞き終えると大丈夫大丈夫って優しく体を包んでくれる
落ち着いた私は眠りについた。
あなたちゃんの上に布団をかけながらお兄さんはこんなことを言葉にした
有岡くんはすーっと涙を流した。
私が目を覚ました時には、有岡さんはいなくてお兄ちゃんは、私の傍で笑って「良かったね」って。何があったのって聞いても、なんにもないよって教えてくれそうになくて。
あなたはいい人に出会ったねって頭なでなでして。にこって笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。