鷲木と先生の事件からしばらく経った。俺と天川さんの関係は相変わらずだ。日に日に好きだという想いが募ってきて、そろそろ告白したいと思うがなかなか勇気が出ず、日だけが過ぎていった……。
そんなある日。ふと中野神社の事を思い出して急遽中野神社へ向かった。中野神社は相変わらず誰も来ていないみたいで、ぼろぼろになってきていて、草だらけで、不気味だった。不気味な神社は良くないと聞いたことがあったので、鳥居をくぐらずに俺は神社を外から見ていた。そこへ突然、目の前に1匹の狐が現れ、こちらへ向かってくる。口に何か咥えていて、俺の前まで来ると狐はいつの間にか人間の男になっていて言葉を話した。
そう言って手渡される。受け取ったお守りを見て見れば、木でできていて、そこに不思議な文字と草木や花が彫刻で描かれており、とても綺麗なものだった。
そう言うと狐の男はあっと言う間に、姿を消してしまった。一瞬の出来事でしばらくその場から動けなかった。ふわっと風が吹いて、はっとした。俺は貰ったお守りを見て、そっと握りしめる。
覚悟を決める。お守りを鞄にしまい、急いで中野神社を後にした。
本数の少ないバスに乗り、電車に乗り替えて、北へ北へと戻っていく。目的の駅で降りて少し歩けば、鳥居が見えてくる。……一度来たことのある北野神社だ。
お辞儀をし、鳥居をくぐれば、気持良い風が吹いて緊張していた気持ちが落ち着く。手水舎で清め、拝殿で参拝をする。参拝が終わった時、ふと人の気配を感じて、そちらの方へ向けば、人と目が合い、心臓がはねた。
驚いた表情を浮かべ立っている天川さんの元へ歩いく。
不思議そうな表情を、天川さんは浮かべている。……もしかしたら、伝えたことによって、この関係が終わってしまうかもしれない。気まずくなるかもしれない。それでも……それでも、俺は伝えたかった。覚悟を決め、真っ直ぐ天川さんの目を見る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。