第22話

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2019/08/30 09:01
鷲木と先生の事件からしばらく経った。俺と天川さんの関係は相変わらずだ。日に日に好きだという想いが募ってきて、そろそろ告白したいと思うがなかなか勇気が出ず、日だけが過ぎていった……。


そんなある日。ふと中野神社の事を思い出して急遽中野神社へ向かった。中野神社は相変わらず誰も来ていないみたいで、ぼろぼろになってきていて、草だらけで、不気味だった。不気味な神社は良くないと聞いたことがあったので、鳥居をくぐらずに俺は神社を外から見ていた。そこへ突然、目の前に1匹の狐が現れ、こちらへ向かってくる。口に何か咥えていて、俺の前まで来ると狐はいつの間にか人間の男になっていて言葉を話した。
狐の男
白鳥様ですね?中野神社へまた来てくださりありがとうございます。無事に役目を全うされたのですね。こちら、わたくしのご主人様からお礼にお預かりしましたお守りでございます
そう言って手渡される。受け取ったお守りを見て見れば、木でできていて、そこに不思議な文字と草木や花が彫刻で描かれており、とても綺麗なものだった。
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
あ、ありがとうありがとうございます……
狐の男
いえいえ。白鳥様こそ、本当にありがとうございました。それでは、わたくしは急いでおりますので失礼します。……白鳥様あなた様の恋もきっと実りますよ、さようなら
そう言うと狐の男はあっと言う間に、姿を消してしまった。一瞬の出来事でしばらくその場から動けなかった。ふわっと風が吹いて、はっとした。俺は貰ったお守りを見て、そっと握りしめる。
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
(なんだろう、ここに来て勇気もらえたな……。今日ちゃんと天川さんに想いを伝えよう)
覚悟を決める。お守りを鞄にしまい、急いで中野神社を後にした。



本数の少ないバスに乗り、電車に乗り替えて、北へ北へと戻っていく。目的の駅で降りて少し歩けば、鳥居が見えてくる。……一度来たことのある北野神社だ。

お辞儀をし、鳥居をくぐれば、気持良い風が吹いて緊張していた気持ちが落ち着く。手水舎で清め、拝殿で参拝をする。参拝が終わった時、ふと人の気配を感じて、そちらの方へ向けば、人と目が合い、心臓がはねた。
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
天川さん……
天川 海月(あまかわみづき)
天川 海月(あまかわみづき)
白鳥くん! どうしてここに?
驚いた表情を浮かべ立っている天川さんの元へ歩いく。
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
実は天川さんに会いに来た。どうしても伝えたいことがあって
天川 海月(あまかわみづき)
天川 海月(あまかわみづき)
うん……
不思議そうな表情を、天川さんは浮かべている。……もしかしたら、伝えたことによって、この関係が終わってしまうかもしれない。気まずくなるかもしれない。それでも……それでも、俺は伝えたかった。覚悟を決め、真っ直ぐ天川さんの目を見る。
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
俺は……俺は、天川さんのことが好きだ

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