第16話

-14-
31
2019/08/29 00:51
天川さんが好きだと気付いてしまったが……これはかなりまずいんじゃないか? だって、天川さんは鷲木が好きで、鷲木は金土先生が好きで、俺は天川さんが好き。
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
(“三角関係”じゃないか、これはやばいぞ)
そんな事をもやもや考えていると、
鷲木 大地(わしぎ だいち)
鷲木 大地(わしぎ だいち)
おい、おい、海星大丈夫か?顔、赤くなったとおもったら今度は青くなって
鷲木に肩を叩かれて、はっとなる。
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
あ、いや、大丈夫。あの、俺、天川さんのこと好き……
望月 結兎(もちづき ゆいと)
望月 結兎(もちづき ゆいと)
やっと自覚したか!応援してるから、何かあったら相談してくれよな
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
ああ。ありがとう……。お前らも頑張れ
昼休みの終わりが近づき、男子3人の恋バナ(?)はこれでお開きとなった。


その日の放課後に、鷲木は金土先生と途中まで一緒にまで帰ることができたらしい。3人のグループチャットに鷲木から嬉しそうなメッセージが夜にきていた。それに返事を送って俺は布団に入った。この時はまだ、あんな大きな騒ぎになるなんて思ってもなかった。





次の日。学校に行くと、あちこちでざわざわとしていて、何かあったのだろうか?と最初は特に気にとめてなかった。が、教室に入れば何故か鷲木がクラスメイトや他クラスの生徒に囲まれていて、何かあったのだと俺は悟った。教室を見渡せばそれを呆然と見ている結兎と、そわそわしている天川さんがいたので捕まえて事情を聞く。

2人の話によれば、昨日鷲木と金土先生が一緒に帰っていたのを複数の金土先生ファンが見ておりSNSなどで「あの2人付き合ってるんじゃない?」という噂が流れてしまったらしい。実は金土先生は男女共に沢山の生徒に好かれていて、隠れファンクラブがあるくらい人気なのだ。だからだろうか、噂がたった1日で全校に広まってしまっている。

鷲木はずっと否定をしているが、2人が一緒にいるのをよく見るという生徒も多く、なかなか誤解が解けずに収まらなかった。

そして、どうやら金土先生の方も沢山の生徒たちに囲まれてるらしく、他の先生が止めるよう怒る声がこの教室まで聞こえてきた。
それを聞いたからだろう、鷲木が突然立ち上がって教室を出ていく。それをまるでテレビでよく見る取材陣の様にクラスメイトや他クラスの生徒も鷲木の後ろをつけて出ていった。
望月 結兎(もちづき ゆいと)
望月 結兎(もちづき ゆいと)
俺のせいかな、一緒に帰ればって提案したの俺だし……
白鳥 海星(しらとり かいせい)
白鳥 海星(しらとり かいせい)
結兎のせいなわけないだろ
天川 海月(あまかわみづき)
天川 海月(あまかわみづき)
君たちに何があったのかは分からないけれど、とりあえず鷲木くんを追いかけてみよ
小走りで人混みをかき分け鷲木を追いかけた。鷲木がたどり着いた先はやはり金土先生の元で、周りからは冷やかしや、馬鹿にした声までも聞こえてくる。
鷲木 大地(わしぎ だいち)
鷲木 大地(わしぎ だいち)
よく聞いてくれ! 誤解してるだろうが、俺は金土先生と付き合ってなんかない! 金土先生は部活で世話になってるだけだ!
よく通る鷲木の声が廊下に響く。皆静かに耳を傾けているが、まだこそこそと信じきっていないような声が聞こえてくる。
金土 琴(かなつち こと)
金土 琴(かなつち こと)
私は教師です!生徒とは付き合いません!
どうか信じてください
金土先生も皆に向かって叫ぶ。ざわざわとする野次馬たち。その声を遮るように鷲木が叫ぶ。
鷲木 大地(わしぎ だいち)
鷲木 大地(わしぎ だいち)
はあ……。俺には年下のすごく可愛いくて優しい好きな奴がいるし、こんな可愛くもねえ年上の先生なんか好きになるわけねーだろ! 訳のわからん噂で金土先生に迷惑かけんな!
そう言って、鷲木はその場を去っていった。
金土先生は呆然と立っていたが、突然ペタリ床に座りこんでしまった。咄嗟に天川さんが
駆け寄り、声をかけに行った。俺と結兎も天川さんと金土先生の元へ駆け寄った。その間、いろんな先生が自教室に戻るよう指示をし、なんとかこの騒ぎは収まった。
天川 海月(あまかわみづき)
天川 海月(あまかわみづき)
先生、大丈夫ですか?
金土 琴(かなつち こと)
金土 琴(かなつち こと)
うん、なんとかね……。海月ちゃんありがとう。でも、なんだろ、鷲木くんが庇ってくれたって分かってるんだけど辛いなあ……
金土先生はそういってすっと一筋、涙を流した。

プリ小説オーディオドラマ