うーんと伸びをしながら、隣を歩くのは天川さん。ついさっき、やっと図書委員が終わったり、天川さんの提案で俺達は駅まで一緒に帰ることになった。学校から駅まではかなり近く、徒歩5分ほどで行けるのだ。
わくわくとした表情でこちらを見てくる。
なんか、こう、尻尾が見えそうな勢いだ。
笑いが堪えられず、俺がふっ、とふきだせば表情は一転。天川さんはムッとした顔になってしまった。それがまたおかしかった。
はははと俺が笑ってると、ムッとしていた天川さんもいつの間につられて笑っていた。
駅に着いたあとも電車が来るまで小さいくすくす笑い、笑いが収まらなかった。
電車に乗れば少し人が多く、空いていた扉近くに並んで立った。
狭くないか確認するため、隣に立つ天川さんを見ると目があった。
目尻に浮かぶ涙が目に止まり、俺は「やばい!」と思った。けれどそれは遅く、頭が割れそうなくらい痛くなる。
電車の揺れと頭痛でふらっとしてしまう。
それをとっさに天川さんが支えてくれ、なんとか倒れずに済んだ。
それと同時に
「次は、○○駅、○○駅……」
という車内放送が流れた。
俺が肩にかけていた荷物を奪い、電車が止まって扉が開けば小さな体で俺を支え、電車を降り、ホームの椅子に座らせてくれた。
頭が割れるような痛みで、意識が朦朧とする。ぼんやり歪む視界……天川さんが走り去っていく姿が見えたのを最後に暗くなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。