第18話

始まりの原因
342
2019/04/29 01:08
火ノ神 瑠璃
─── 蒼士君、君だよ。
室星 蒼士
お、俺?
火ノ神 瑠璃
うん。君は日本を守る狐の内の1つの家系の数少ない血族。
室星 蒼士
…じゃあ、俺がみんなをDEATH GAMEに巻き込んだってことなのか…?
火ノ神 瑠璃
まぁ、言い換えればそういう風にも取れないこともないけど ──
室星 蒼士
俺さえいなければ咲桜とかみんなもあんなことには…
被せて言ったネガティブ発言に怒りを覚える。
敢えて、その場では言わないことにした。
室星 蒼士
何で俺があの"その狐"なんかの子孫なんだよ…っ!
俯き掠れた声が耳に届く。
若槻先生
…室星。人の話は最後まで聞け。勝手に都合よく解釈するな。
室星 蒼士
!………はい…。
先生の威圧的な視線には怒りがこもっていた。
瑠璃も不機嫌そうな表情をして、少しだけ蒼士のことを睨んでいる。
火ノ神 瑠璃
翔馬さんの言う通り。DEATH GAMEに巻き込まれたとしても"今"君が生きてることに正直、感謝するべきだよ。
碓氷 澪
どういうこと?
火ノ神 瑠璃
狐の子孫は少ないって言っても十何人もいた。だけど、それが今は残っているのはたったの5人だけ。なんでだと思う?
碓氷 澪
病気とか?
若槻先生
違う、殺されているんだ。
碓氷 澪
はい?
お茶を飲みながら、机に視線を向けたまま先生がそう答えた。
その発言に蒼士も驚いている。
若槻先生
それも政府によってな。狐の一族は危ないと判断され、一族全員を暗殺しようとしているんだ。
室星 蒼士
そ、それって犯罪じゃないですか?
若槻先生
ああ、いつも俺言ってんだろ。"教科書なんて国が作った洗脳本だ"って。
碓氷 澪
言ってましたね…
火ノ神 瑠璃
現当主は当時は名前も顔も知らないのに同じ一族だからって君達を守って、自分の身を政府に売った。
そう言って、1枚の写真を瑠璃は机に置いた。


広い部屋の中央にある水槽は透き通る赤い液体で満たされていて、その中には沢山の管や酸素マスクを付け浮遊している黒髪の女子がいた。
周りには白衣の人達が監視し、脳波を見ながら何か話している。
室星 蒼士
おい、ちょっと待て。
碓氷 澪
どうしたの?
室星 蒼士
スズ。
スズ
何?
蒼士に呼ばれ反応したスズがスマホ画面に現れる。
スズの視線が自然と写真に移った時、その表情は一瞬だけ驚きへと変わっていた。
室星 蒼士
前に俺にこんな感じの動画見せて感想求めたことあったよな?
スズ
あるけど?
室星 蒼士
お前、狐の子孫か?
スズ
……。
室星 蒼士
もしそうなら、何で俺の元に来た?
スズ
……独りの蒼士を見守るため。
スズはそうポツリと呟くと、画面を消した…。

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