あれから半年が経った。
美海子は緋山先生と一緒にいたいというので、翔北病院の中のろう学校で働き始めた。
でも、緋山先生が夜勤の時一人では家に帰れない。
そんな時は、白石先生と冴島さんが一緒に帰ってくれて朝まで一緒にいてくれてご飯まで作ってくれる。
なぜなら、美海子は火が怖くて使えないから。
火を見ると美海子はパニックを起こしてしまう。
それに気がついたのは美海子が緋山先生のところに来て3ヶ月後に起こった。
美海子「ねーね、おきて。」
緋山「んーー。」
美海子「ねーね、たすけて。」
緋山「ん?どうしたの?」
美海子「ひが…。」
緋山「火?」
緋山先生が目覚めてすぐに見た光景。
それは上の階が出火元で起きた火災。
緋山「美海子、逃げるよ。美海子?」
美海子「ねーね、うごけない…。」
緋山「え?」
美海子「こし、ぬけちゃった…。」
緋山「じゃあ、おんぶするから乗って。」
美海子「ねーね、ごめんなさい。」
緋山「大丈夫だから。さあ、乗って。」
美海子「うん。」
美海子は緋山の背中に乗った。
そして緋山は美海子を外に運んだあと、上の階の人を助けに戻った。
そのあと上の階の人を翔北に運ぶように告げ、緋山先生と美海子も救急車に乗った。
それから上の階の人は、命を取りとめ助かった。
だが、この日から美海子に異常が起こった。
PTSD(外傷後ストレス障害。)
それもそうだ。
美海子は今まで音の無い世界で生きてきて、実家もIHで火災に会うのも初めてだった。
美海子は誰にも気づかれないように外に出たはずだった。
しかしそれにいち早く気がついたのは藍沢先生だった。
美海子「はーはーはーはーはーはーはー……」
美海子は過呼吸を起こしていた。
藍沢「緋山、妹は?」
緋山「あれ?さっきまでそこに……。」
藤川「美海子なら今外に……」
藍沢「あいつおそらく過呼吸起こす。」
緋山「え?」
藍沢「緋山、美海子が今まで火を見たことは?」
緋山「おそらくない…。」
藤川「どういうことだ?」
藍沢「藤川は黙ってろ。」
藤川「悪い…。」
藍沢「おそらく美海子、PTSDで過呼吸起こす可能性がある。」
冴島「緋山先生、美海子ちゃんが過呼吸起こして倒れました。今、白石先生が見てます。」
緋山「え……。分かった。」
冴島さんと緋山先生は美海子のところへ向かった。
緋山「美海子!」
白石「美海子ちゃん、今回の火災が原因でPTSDになって過呼吸起こした。」
緋山「そうだよね…。今までこんなこと……。」
美海子「はーはー…ねーね、はーはー…ごめんなさい。」
緋山「なんで美海子が謝るの?私が美海子を守らないといけないのに…。」
冴島「とりあえず、緋山先生が仕事してる間、美海子ちゃんは仮眠室で休ませておきます。」
緋山「うん……。」
白石「仕事の合間に私と冴島さんも美海子ちゃんの様子見に行く予定だけど、緋山先生も仕事の合間見つけて見に行ってあげて。」
緋山「分かった。」
冴島「美海子ちゃん、疲れたでしょ?」
白石「仮眠室で休もうね。」
美海子「はい。」
そして白石先生と冴島さん、そして緋山先生は仕事の合間をみて美海子の様子を見に行った。
それから美海子はあの火災を思い出しては過呼吸を起こしたが白石先生、冴島さんをはじめみんながいてくれたお陰か少しずつその頻度が減ってきていた。
だが、まだ火を見ると怖いと言う。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!