どれだけの涙を流せば
あなたを忘れられるのか
それがわからないからまた今日もまた君を思って
僕は泣く。
あの日訪れたあなたの部屋。
窓の外には綺麗なオレンジ色の夕日
それを眺めているあなたもオレンジ色に染められて
儚さをより浮き彫りにしていた。
手にしたあなたの好きなチャプチェの入った弁当箱
それを握りしめた。
今だに見つからないあなたを治す術
見つかったとしてあなたは待っていてくれるのか
正直今の姿を見れば
時間がないのは一目瞭然だった。
そう言って嬉しそうに笑ってくれた。
それだけでよかったんだ。
ずっとそうやって笑っていてくれればよかった
多くは望まない。
それだけをただひたすらに願ったのに
左手で器用に食べるあなたと顔を見合わせて
笑って。
今日あったこと。
今してる事。
そんな事を話した。
急にそんな事を言い始めたあなた
それが最後の言葉のようで
しばらく動けなくなった。
少しずつあなたが霞んできて
嗚呼。俺泣いてるんだってわかった。
そんな言葉しか思いつかなくて
でもその言葉に満足そうに笑うあなた
きっと俺たちはあなたがいるから
だから防弾少年団でいられるんだよ。
面会時間ギリギリまで話し込んで
重い腰を上げて部屋の扉へ向かう
手を振るあなた。
それに応えるように俺も手を振った
部屋の扉を閉めて一歩踏み出した時だった。
––––––––––ガシャンッ!!!!!!
廊下に鳴り響いた金属音。
慌てて開けた扉。
その先の光景に言葉を失った。
アラートブザーが鳴り響く室内。
ベッドの上には
真っ赤に染まるあなたが力なく
倒れ込んでいた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。