第45話

Ep.32
208
2021/03/26 15:43





初めて足を踏み入れたあなたの家。






長い廊下に広い畳の部屋





噂では耳にしていた。






あなたの京都の実家。






でも予想以上に冷たい雰囲気を醸し出すその空間が






すごく居心地悪かった。






少しして開いた襖から着物姿の男性が二人






少し離れたところに腰掛けた。







それをみてあなたは少し前に進むと






三つ指ついて頭を下げた。






貴方
貴方
お父さん。ご無沙汰してます。
???
どの面下げて帰ってきた。
貴方
貴方
ッ!!
貴方
貴方
これが最後です。
そういうとおもむろに懐から出した一枚の紙切れ




それを目の前の男性に渡したあなた





貴方
貴方
正式に除籍させていただきたく参りました。
貴方
貴方
署名、捺印して頂けますか?
???
もっと早くくると思っていたが、予想より遅かったな
貴方
貴方
時間が作れず申し訳ありません。
日本語での会話だから何を言っているかはわからなかったけど




歓迎されてないことはヒシヒシと伝わってきた





おもむろにその紙切れにサインとハンコを押すと





あなたにつき返して席を立った。
貴方
貴方
ありがとうございました。
???
これで俺とお前はもう赤の他人。
???
もうここの敷居を踏むこともないだろう。
貴方
貴方
はい。
貴方
貴方
12歳まで育てていただいたことに関しては感謝しています。
あなたの言葉を待たずに部屋を出て行ったその人




襖の閉まる音を聞いてすぐにあなたの息を吐く音が聞こえた。




貴方
貴方
ごめんね。
そう言って笑ったあなたがすごく痛々しかった。


屋敷を後にしてまた抜けていく竹林。





すでにランタンが灯され暗い中を歩く





誰も口を開かない。





あなたにとっては呪縛のような場所だったのかもしれない





それが解き放たれた日




でも何故か手放しで喜べない俺がいた。

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