初めて足を踏み入れたあなたの家。
長い廊下に広い畳の部屋
噂では耳にしていた。
あなたの京都の実家。
でも予想以上に冷たい雰囲気を醸し出すその空間が
すごく居心地悪かった。
少しして開いた襖から着物姿の男性が二人
少し離れたところに腰掛けた。
それをみてあなたは少し前に進むと
三つ指ついて頭を下げた。
そういうとおもむろに懐から出した一枚の紙切れ
それを目の前の男性に渡したあなた
日本語での会話だから何を言っているかはわからなかったけど
歓迎されてないことはヒシヒシと伝わってきた
おもむろにその紙切れにサインとハンコを押すと
あなたにつき返して席を立った。
あなたの言葉を待たずに部屋を出て行ったその人
襖の閉まる音を聞いてすぐにあなたの息を吐く音が聞こえた。
そう言って笑ったあなたがすごく痛々しかった。
屋敷を後にしてまた抜けていく竹林。
すでにランタンが灯され暗い中を歩く
誰も口を開かない。
あなたにとっては呪縛のような場所だったのかもしれない
それが解き放たれた日
でも何故か手放しで喜べない俺がいた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。