いつだったか…
いつも涼しい顔をしていたあなたが
ダンスレッスンで息を切らして
簡単なフリも間違えるようになって
膝に足をついて苦しそうにしていた。
その光景があまりにも見慣れてなさすぎて
みんなでびっくりしたのを覚えてる。
珍しく声を荒げたあなた
それに圧倒されて動けなくなったヒョンやジミナにグギ。
それに反応したのはユンギヒョン。
練習室を出て行ったあなたをそっと追いかけた
練習室を出て少し行ったところにある
自販機前のベンチ
あなたの後ろ姿が見えた。
この頃のあなたはいつものあなたらしくなかった
なんなくこなしていたステップも
狂うことなかった音程も
なんとなく違和感があった。
単なるスランプ。
そう思ってた。
だから俺はこう言ったんだ
そう言って差し出したアイスココア。
俺が行き詰まったときはいつもコレ。
甘いものって嫌な事も癒してくれるから。
そう言って渡したココアに怪訝そうな顔を浮かべながらも口をつけたあなた
そう言ってはにかんだあなた
でもスランプとか言う簡単なものじゃないなんて
この時は知る由もなかった。
サンコイチ。
そう言っていられる時間が限られていることに
この時は全く気づいてなかった。
この時でさえきっとあなたは1人
俺たちを思ってたんでしょ?
その優しさに気づいてあげられなくて
ごめんね………
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。