第25話

Ep.12
257
2021/03/20 12:56




引き取られて5年。



10歳を迎えてすぐの時だった。






その日は雪がちらついていて





すごく寒い日だった。






京都は地形が盆地で、






夏は暑く冬は寒い。







韓国ほどではないけれど雪も降るし






ひどい時は積もることもある。







でも京都の町は古き良き情緒を残しているところが多いから






それも風情があると雪の日も外に出ている人は多かった。






その日もお稽古から抜け出した私は兄の部屋にいた。







どこか雰囲気がいつもと違うと感じながらも兄と話をしていた








千家 柊
千家 柊
愛…今日は雪だね
あなた
あなた
そうだね。
千家 柊
千家 柊
ちょっと外に行こうか
あなた
あなた
え?バレたら怒られるよ
千家 柊
千家 柊
大丈夫。バレない裏口があるんだ!
そう言って私の手を引っ張ってドンドン廊下を突き進んで





屋敷の裏手の勝手口から外に出た。







竹林の道を抜けて






その先に見えた観光地で賑わう町






街には露店も出ていて






初めての2人だけの冒険のようでワクワクしたけど







それ以上にどうしようという気持ちが渦巻いていた。





千家 柊
千家 柊
わぁぁー!すごいね!
あなた
あなた
うん…
あなた
あなた
でも、早く帰ろう?
あなた
あなた
今日こんなに寒いし、柊風邪ひいちゃうよ
千家 柊
千家 柊
うん。
千家 柊
千家 柊
でもね。もういいんだ。もういいんだよ。
さあ悲しげに呟く兄を止めることはできなくて




一通り見てまわった。




雪はどんどん降ってきて





傘も持たずに出てきた私たちの羽織が




雪を吸い込んで冷たくなって




足袋はすでにびしょ濡れだった。





どんどん兄の肌が白から青白くなっていって





私は怖くなった。



あなた
あなた
ねぇ!柊!帰ろうよ!
あなた
あなた
こんなに冷えてちゃダメだよ。
あなた
あなた
ねぇ!柊?
千家 柊
千家 柊
やめてよ!
千家 柊
千家 柊
僕は…あの家に帰りたくないんだ…
そう言って泣き始めた兄。




それ以上何も言えなくて



せめて冷えないように抱きしめるしかなかった。




千家 柊
千家 柊
・・・ック……
千家 柊
千家 柊
ぁあッ。ヴッ……ヒューヒュー…
あなた
あなた
え?柊?
あなた
あなた
どうしたの?
あなた
あなた
柊?
急に苦しみ出した兄。




何もできず慌てふためく私。



どうしよう。



死んじゃう。




そう思うと震えてきて






声を出そうにも声も出なくて






必死に絞り出した。
あなた
あなた
・・・・けて。
あなた
あなた
誰………けて……
あなた
あなた
誰かぁぁぁぁ!!助けてくださいぃぃぃぃ!!!
ワンワン泣きながら叫ぶ私と



私の腕の中で苦しそうな呼吸をする兄。




それを聞きつけた周りの大人が救急車を呼んでくれたのか





気づいた時見たのは救急車の中で心臓マッサージされる





青白い顔をした兄の姿

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