桜も散って日差しが強くなり
蝉の音が聞こえ始めた頃
相変わらず変わらない日常を送っていた私
そこへやってきた小さな来客。
小さな友達の愛莉ちゃん。
いつもと違って可愛い服を着て
ルンルン♪と言うのがよく似合う
少し浮き足立ってる少女。
そしてその後ろに笑顔の彼女のお母さん。
目が会い会釈するとそれを返してくれた。
小さな友達はどうやら病気を克服したらしく
長かった病院生活に終わりを告げた。
嬉しい事なのに寂しく感じる
彼女の為にと作りかけた曲はまだ完成していない。
いつかまたお見舞いに来てくれた時にでも
歌ってあげよう。
それまでは私も元気でいなくちゃいけない。
きっと私の希望だったと思う。
そう言って渡してくれたのは
健康第一のお守り。
ピンク色の可愛いそのお守りを大事に枕の下に入れた。
お母さんに手を繋がれて嬉しそうに去っていく彼女に手を振った
そのまま玄関から彼女たちが
出ていくのをラウンジから見つめていると
聞こえた看護師たちの声。
耳を疑った。
あんなに嬉しそうに退院していった愛莉ちゃん。
完治したわけではないと言う事?
思わず看護師たちに話しかけた。
改めて知った。
この場所は生と死が渦巻きあう場所
もしかしたら昨日笑っていた人が今日はもう眠ったままになるかもしれない
それは私にも言える事だった。
どうか神様。
あの小さな少女を助けてあげてくださいと
祈るしかできなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!