第85話

Ep.72
184
2021/04/01 12:30




桜も散って日差しが強くなり



蝉の音が聞こえ始めた頃



相変わらず変わらない日常を送っていた私



そこへやってきた小さな来客。



小さな友達の愛莉ちゃん。



いつもと違って可愛い服を着て



ルンルン♪と言うのがよく似合う



少し浮き足立ってる少女。



そしてその後ろに笑顔の彼女のお母さん。



目が会い会釈するとそれを返してくれた。



愛莉
愛莉
おねぇちゃん♪愛莉ね家に帰れる事になったの
貴方
貴方
よかったね。
愛莉
愛莉
うん♪
貴方
貴方
じゃあ学校行ってたくさん勉強しなくちゃね
愛莉
愛莉
お勉強かぁー。やだなぁ。お友達でかな?
貴方
貴方
愛莉ちゃんなら大丈夫だよ!
愛莉
愛莉
おねぇちゃんにまた会いにきてもいい?
貴方
貴方
いいよ!
愛莉
愛莉
ヤッタァー



小さな友達はどうやら病気を克服したらしく



長かった病院生活に終わりを告げた。



嬉しい事なのに寂しく感じる



彼女の為にと作りかけた曲はまだ完成していない。



いつかまたお見舞いに来てくれた時にでも



歌ってあげよう。



それまでは私も元気でいなくちゃいけない。



きっと私の希望だったと思う。



愛莉
愛莉
これ愛莉にはもう必要ないからあげるね。



そう言って渡してくれたのは



健康第一のお守り。



ピンク色の可愛いそのお守りを大事に枕の下に入れた。




お母さんに手を繋がれて嬉しそうに去っていく彼女に手を振った




そのまま玄関から彼女たちが



出ていくのをラウンジから見つめていると



聞こえた看護師たちの声。





看護師1
愛莉ちゃん退院したんだって?
看護師2
そうなの。でもね・・・
看護師1
でも何?
看護師2
もう病院では治療できないってそれで・・・
看護師1
それって・・・
看護師2
うん・・・
看護師1
そうか・・・
耳を疑った。



あんなに嬉しそうに退院していった愛莉ちゃん。



完治したわけではないと言う事?



貴方
貴方
それってどう言う事ですか?
思わず看護師たちに話しかけた。
看護師1
自宅療養に切り替えたって事。
看護師2
予後は自宅でゆっくりさせたいってご家族の意向で
貴方
貴方
そんな・・・




改めて知った。



この場所は生と死が渦巻きあう場所



もしかしたら昨日笑っていた人が今日はもう眠ったままになるかもしれない




それは私にも言える事だった。



どうか神様。



あの小さな少女を助けてあげてくださいと



祈るしかできなかった。



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