この部屋の中にはヌナの匂いが溢れている
どれだけの時間が過ぎたかな
ここにいればヌナを感じていられるから
トイレとご飯以外はこの部屋で過ごした
シヒョクヒョンに送っていたヌナの私物も引き取って
この部屋に並べて
ヌナの匂いのするもので埋め尽くした
匂いってね思い出より遥かに記憶に残るんだ
だから忘れないように
ヌナの匂いで溢れるように
枯れることのない涙
身体中の水分が出てしまったのでないかと言うほど
今日も握りしめて眠る
近くにヌナを感じながら
–––––––––……ガタンッ
変な物音に顔を上げてもここにいるのは自分だけ
不思議に思い部屋中を見渡しても変わらない風景
––––––––––……ペタッ…ペタペタ
––––––––––………ペタペタ……カタンッ……
どんどん近づいてくるその足跡
側にあるよって言ってくれてるようで
すごく安心して
久しぶりに深い眠りに落ちた
そして夢を見た
ヌナと病室で交わした約束………
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!