「だ、大丈夫…?」
「このくらい大丈夫大丈夫!私、根性と運だけが取り柄だから!ほら、泣かないで!」
「だって…」
「それより怪我はない?」
「君と比べたらこんなの…」
「うわ〜、膝凄い血だらけ…保健室行こ。」
「いや、いいよいいよ!」
「私も行くから一緒に!」
「うん…あ、な、名前は?助けてもらったから覚えときたい…!」
「名前?私、渚紗。終夜渚紗!」
「渚紗…“ナギちゃん”だね。いつか絶対にナギちゃんに今の恩返しするよ。」
「え、別にいいよ?当然のことをしただけだし。」
「ううん、面白い人は興味あるから。面白い人って主人公の素質があると思うんだ。独りの主人公でも仲間に慕われる主人公でも…結局、主人公は誰かの為に身を捨てようとするから。そんなナギちゃんが主人公みたいで面白かった。」
「………難しくてよく分からないや。」
「そうかなぁ…俺、そんな強い主人公と戦いたい。ゲームで言うなら魔王側になりたいんだ!」
「私が主人公で君が魔王なら…魔王が主人公に恩返しって何か不思議だね?」
「魔王も時には優しくなりたいんだと思う。」
ふと思い出したあの頃。
面白い人への興味、
強い主人公と戦ってみたい、
力を見せつける魔王になりたい。
あの男の子の言葉に私は足を止める。
今と昔じゃ容姿はかなり違うけど…言葉は重なった。
神々を見ると、何処か懐かしい笑顔を浮かべていた。
すると、神々のいる場所を埋めつくす程の影。
身の危険を感じて踵を返した時、背後から聞こえてきたのは…
人間らしい感謝の言葉と共に大きな音。
また立ち止まり振り向くと、大通りに鉄骨が沢山転がっていて、その内の1つの鉄骨が神々の胴を貫いて地面に突き刺さっていた。
苦虫を噛み潰したような表情の蓮水が隣を駆け抜け、神々の元に行くと鉄骨を掴む。
私は混乱してどうしたら良いのか分からない中、視界の隅に澪織が見えてすぐに駆け寄った。
温かい澪織の胸にそっと手を当ててみる…が、心臓は動いていなかった。
原因は?…一目瞭然、脚の包帯が白が見えないくらいに真っ赤に染まっている。大量出血による死。
それで神々も連帯責任で……
「でも、尽きるのが先だったみたい…」と小さく呟いた結弦は蓮水を手伝い、神々を貫く鉄骨を地面から引き抜いた。
端末を操作した結弦。
何も無いところにドアが現れて私達は中に入った。
そこは通路で通路には沢山のドアがついている。
端末を見ながら沢山あるドアの1つを開ける。
…すると、またその向こうに沢山のドアがあった。
澪織に懐いていた黒猫がクロとじゃれ合いながら私達の後ろをついてくる。
このゲーム終わったらこの子達ってどうなるんだろ…と少し思いながらドアを開け続け10分。
50回を過ぎたくらいだろうか?今までとは違うデザインのドアが現れた。
そう言われ、私の心臓はドクッと跳ねる。
この先にみんなを殺した犯人がいる、考えるだけで強い殺意が湧いてきた。
でも、殺しはしない。求むは謝罪。土下座させたい。
ドアノブに手をかける。
うるさい心臓の音にもう少し静かにして、と心の中で唱えると私はドアノブを回して開けた。
そこにいたのは……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!