第23話

大迷宮
1,411
2019/05/28 11:10
終夜 渚紗
うっ…
私…何してたんだっけ……
メンバーをシャッフルしてみんなでおしゃべりしてたところまでは覚えてるんだけど、そのあとは…
周りを見ると、6帖程の白い部屋。
その部屋の中には私とシャッフルの際にペアになった陽向とペットのクロ。
陽向はまだ寝ていて、クロは陽向の背中の上で丸くなって気持ち良さそうに寝ている。
部屋には扉も窓も照明器具もないのに明るい。
この部屋の天井自体が光を持っているように私の目には見えた。
終夜 渚紗
考えてもしょうがない……陽向、早く起きて。
蘭 陽向
ん〜…まだもう少し……
終夜 渚紗
どんだけ余裕あるの…今、ゲーム中なんだけど…
蘭 陽向
………あっ…。何処ここ?
終夜 渚紗
分からない。
蘭 陽向
取り敢えずさ、俺の背中に乗っている重い何か退けてくれない?重くて起き上がれない。
目を擦りながら言った陽向の要望通り、私は陽向の背中に乗っているクロを両手で掴むと自分の膝の上に乗せた。
そこであることに気が付く。
さっきまで着ていたはずの制服は何処かに消えて、今は私も陽向も私服姿になっていた。
蘭 陽向
…渚紗。
終夜 渚紗
ん?
蘭 陽向
武器、持ってる?
終夜 渚紗
持ってない…。変なナイフも拳銃も無くなってる。
蘭 陽向
俺もない。
終夜 渚紗
まさか制服と一緒に没収された?
蘭 陽向
いや、その可能性は低い。それだったら武器を渡す意味が無くなる。
終夜 渚紗
じゃあ、何処に…
そのとき、膝の上にいたクロが突然起きたと思うと部屋の中を歩き始めた。
空を飛んで天井を見たり、鼻を地面に近づけたりして何かを探すように歩き続けている。
最終的に止まったのは、部屋の角の前。
私達を見て、こっちに来るよう伝えているように見えて私は陽向と顔を合わせるとクロがいる角の方に近付いた。
終夜 渚紗
何も無いけど…
蘭 陽向
う〜ん…………あっ。
クロの横にしゃがみ、手を床に這わせていた陽向が何かを掴むとそれを引っ張る。
そこにあったのは私と陽向が選んだ武器。
拳銃も2丁しっかりと置かれていた。
ふと陽向の手を見ると、手首から先が消えていて、思わず私は小さく悲鳴をあげた。
蘭 陽向
え、何?
終夜 渚紗
て、手が…
蘭 陽向
手?……何これ。透明マント的な?
終夜 渚紗
じゃあ、手はちゃんとある…?
蘭 陽向
当たり前じゃん。触ってみ?
陽向が私の方に手首までの手を差し出す。
恐る恐る触ると、布の触り心地の奥にちゃんと手の形があった。
触った布のようなものを引っ張ると、見えなかった陽向の手が指先まで見えた。
で、今度は私の手を見ると布の感触がある部分だけ見えなくて床の白が見えている。
終夜 渚紗
透明マントってアニメだけの存在だと思ってた…
蘭 陽向
ほんと、驚き。
終夜 渚紗
取り敢えず、武器を回収しよう。
蘭 陽向
それはどうする?
終夜 渚紗
これ?ん〜…一応、持っとこっか。
折りたたんでポケットに入れると、床の端に置いてある銃と変なナイフを仕舞った。
クロには私のパーカーのフードに入ってもらう。
部屋の中から銀や黒が消えて、真っ白な部屋に戻ったところで一面の壁が無くなった。
そこに広がるのは白い壁に囲まれた通路。
通路の壁は身長よりも遥か高く、よじ登るのは無理そうだ。
胡蝶 結弦
「全員が目覚めて10分が経ったので次のゲーム説明を始めます。その前に今回の移動で最も早く到着したのは東京地区。最下位は栃木。勿論、最下位は失格なので既に終わりました。あと俺は21ゲーム関東地区の進行役の胡蝶結弦、よろしく。さて、説明に入るから各自通路とは真反対の壁を見て。5分後に開始する。」
『シャッフル大迷宮』
シャッフルした新しいパートナーと共に途中にあるミッションをクリアして、大迷宮から脱出してください。

【ルール】
・ゴールを目指してください
・障害物を避けてください
・部屋ではミッションをクリアしてください
・制限時間は上位10名が決まるまで

【注意事項】
・2人の内1人が死んだ場合、シャッフル前のパートナーの人も巻き添えとして死にます
・ミッションに逆らう行為は失格とします
・歩いている途中で出会った他のチームの人は殺しても構いません
終夜 渚紗
簡潔に言うとミッションありの迷路?
蘭 陽向
把握の仕方はそれでいいと思う。
終夜 渚紗
障害物とミッションがどの程度か気になるけど、なんとなくはねぇ…
蘭 陽向
まぁ、そこは何とか頑張ろう。
胡蝶 結弦
「そろそろ5分経つので始める。それじゃ、ご武運を。」
ピーっと笛のような音が聞こえると、私達は部屋から追い出されるようにして、通路へと立った。
真っ白な壁が両側にそびえ立ち、奥に続く道をじっくりと観察する。
取り敢えず、今の時点で見える範囲の通路には隠しボタンみたいな物は無い。
終夜 渚紗
行こっか。
蘭 陽向
そうだね。…でも、闇雲に歩いても迷うだけだから…上は高くて迷路を見下ろせそうだからクロに見てもらうこととか出来ないかな?
終夜 渚紗
それいいかも。クロ、行ける?
少し後ろを向いて、フードを覗くとクロが元気のいい声を出すと、私のフードから飛び出て上へと飛び上がった。
前後左右をキョロキョロと見回すと、私達の少し前へと移動する。
クロについていくと、突き当たりでもう一度クロを見ると左の方に進み、その後も私と陽向は上から迷路を見下ろすクロの後をついて行った。
蘭 陽向
!……行き止まり?
終夜 渚紗
いや、ドアがあるから部屋かも。
蘭 陽向
クロも降りてきたし…。はぁ…ミッションが簡単なのだといいけど…
終夜 渚紗
その願いは叶わない可能性の方が圧倒的に高いね。
蘭 陽向
まぁ、そうなるよなぁ…
そう言いながら、私はドアノブに手を伸ばすとそのまま勢いよく前に押した。
ドアの向こうにあったのは、さっきまでいたところに似た白い部屋と2人の男子、そして部屋の中心にある机の上に置かれた一丁の黒い銃…。

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