巫は眉を下げると、空いてるベッドに座る。
ところで武器を分けようとは言ったもののどうやって分けるかを私は全く考えていなかった。
早くしないと巫に部屋の中で嘔吐されても困る。
そう言うと、初めに響が本格的なサバイバルナイフを手にした。
次に瑠奈ちゃんは少し戸惑った末に鎌を、東雲君は鋸と金槌を選んだ。
巫はフラフラとシーツに近寄ると、錐と鉈を取る。
陽向は弓、蓮水は刀。で、私は…
しゃがんだ瑠奈ちゃんがそう言いながらチェーンソーをズラすと、ナイフのような物が出て来た。
でも、そのナイフの見た目は普通とは違い、柄の部分にスイッチのような物がある。
そこ以外は普通のナイフと変わらない。
「チェーンソーよりは良くないかな?」と言って、瑠奈ちゃんが私に不思議なナイフを渡す。
押した瞬間、私の頬に生暖かい液体が伝った。
私に周りの視線が集まり、驚いている。
1番驚いてるのは私だ。
横目に見えるのはナイフの刃の部分。
手元を見ると、柄の部分の先から光で反射して少し光った透明な糸、その先を辿ると私の顔面真横に突き刺さるナイフへと繋がっていた。
正直、両方嫌。
チェーンソーは持ち歩くの重いし、これはこれで危うく顔面に刺さるところだった。
ここで選ばなかったら4人に少し不信感を抱かれる可能性がある。そう思うと、どちらかは選ばないといけないだろう。
それなら、邪魔なのよりはマシなのか…
励ましなのか分からない言葉を瑠奈ちゃんに貰いながら私は溜息をつく。
みんなが本格的な武器を選んだ中、私は本当にこの変なナイフで大丈夫だろうか。
確かに拳銃はあるけど、それは最終手段であって可能な限りは使いたくない。
何で蓮水と陽向は刀とか弓なのに私は…
無事に生き残って着くことが出来たら、上手く使いこなせるように練習するか…
そう思うと、私は部屋を出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!