『蹴落とし合い教室』
初対面の人の性格を見抜き、落としてください。
【ルール】
・枠の中に書かれているのは教室内にいる内の誰かの性格や情報が書かれています。
・情報の番号と名前を当て合います。
・4校の生徒が残るまで続きます。
【注意事項】
・間違えれば、即失格となります。
・また、2分間誰も当てにいかなければ、1番当てた数が少ない学校の中から、ランダムで1校に失格してもらいます。
[5分後に開始します。]
教室内にある机の上には黒板に貼り付けられているものと全く同じ資料が置かれていた。
私は奥の席に座り、資料を捲る。
沢山の情報の一つに私は目を留めた。
【情報19】
・学校では学級委員長
・趣味は情報収集
・基本冷静だが、たまに焦る
多分、私だ…。
鵬磨高校で私は学級委員長をしていた。
それに情報収集をするのが好きで、学年のことなら人の恋から誰が誰を嫌いまで把握済み。
そして、いつもの私は冷静に判断を下すことが出来るけど、たまに焦って意味不明なことを言ってしまうことがある。
どうバレないようにしよう…。明るく振る舞う?
それとも、わざといつものままでいる?
周りに聞こえないくらいの声でそう私に問う蓮水。
私は小さく「19」と答えて、同じことを聞く。
【情報41】
・学校では比較的大人しめ
・趣味はゲームのプログラミング
・能ある鷹は爪を隠す
能ある鷹は爪を隠す?
蓮水のこれってどういう意味で書かれたんだろ?
まぁ、いっか…さぁて…
……私の趣味を活躍させますか。
情報の紙の内容をだいたい覚えた私は顔写真の紙を手に教室内を見回す。
そう呟いたところで"蹴落とし合い教室"開始を宣言するチャイムが教室に響いた。
みんなが話しながらも周りを疑う目で睨んでいる。
私はそんな目を気にせずに、教室内を見ながら、顔写真に情報の番号を書き込んでいた。
パートナーに自分の番号を指で教えても甘い…。
内緒話で教えても甘い…。
私の目からは絶対に逃さないよ…。
指ならその手の動きで。
内緒話ならその口の動きで、見えなかったらそれはもう行動から探るしかない。
服装、髪型、表情、態度、言葉使い、体型、肌色。
この7つでだいたいのその人の性格は予想出来る。
女子に至っては、スカートから見える足の筋肉の付き方でどの運動部に所属しているかも分かる。
待つことにこだわったのには理由があった。
人が死ぬのは嫌だけど…私は死にたくない…。
このまま2分待って誰かが死んだところで、それを見た周りの人を見たい。
それが待つ理由。
そして、私は2分経ったときのランダムの失格に絶対に当たらない自信があった。
みんなが疑い合うだけで誰も動かない。
別にランダムと言っても、最初なら自分が失格になるのはかなりの低確率。
逆に言わないで、誰かが失格になるのを待つ。
それが最善策かも知れない。
すると…
「赤組2分経過。」
そう結弦の声が聞こえたかと思うと、教室内にいる中の1人が悲鳴をあげた。
悲鳴があがった方を見ると、四肢が切断された女子の死体が転がっている。
パートナーの男子が悲鳴に近い声で叫ぶ。
その瞬間、大量の血を吐いて男子は床に倒れて、そのまま動かなくなった。
あの人は落ち着いてる…。あの子は…
私は2人の死体を見る他の生徒の表情を観察した。
落ち着いている人、泣いてる人、興味がなさそうに欠伸をしている人、様々だ。
すると…
誰かがそう呟く。私も同じ意見だ。
すると、戸田君が心臓を抑えてそのまま倒れる。
隣にいた男子も喉から血が噴き出し床に吸い込まれるようにして、倒れて行った。
本当はこんなことしたくないけど…
私は資料を持ち立ち上がると、一気に名前と情報の番号を読み上げた。
どんどん倒れていく生徒達、床が流れ続ける血で真っ赤に染まり、立っている人数が少なくなる。
残った情報を見て、私を止めようと頑張る人達。
教室に18人立っているときに私は読むのをやめる。
ここからあと10人減らさないと…
蓮水は資料をじっと見て、考えている。
私が"情報19"だとバレるのも時間の問題。
次の人を蹴落とすために教室内を見た。
すると、黒板近くからこっちを見て、ニヤついている人を私は見つけた……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。