走り出した響。
最初に響を待っていたのは、ボードと端末。
「ボードに書いてある道をスタートからゴールまでで全て1度ずつ通るようにプログラムして車を動かしてください。尚、道が交わる場所は何回も通っていいです。」
そう呆れた声を漏らす。
確かにボードの上は道が入り組んでいて、凄い見にくいものだった。
それに看板の下にはさらに説明が続いていて、橋は道が交わる場所を通る度に無くなったり現れたりすると書かれている。
分かりやすく挑発してくる巫に響が舌打ちをする。
そして、端末を手に取り、小さく息を吐くとボードをじっと見つめた。
苦笑いを浮かべながらそう言った巫。
その様子からは響とパートナーに選んで良かったと思っているようにも見えた。
響は分からないけど…取り敢えず、巫は響のことを信頼してるんだ…。
それに比べて、私達はまだお互いのことよく分かっていないし…
そんなことを巫と話している内に…
少し小難しそうな顔をした響が端末から道の確認をするためにボードに視線を移す。
モニターには響がプログラムした車の通り道が表示されていた。
ぐっちゃぐちゃになっている通り道に段々、本当に大丈夫なのかと不安になってくる。
そのことに東雲君が反論する前に響はスタートボタンを押した。
スタート地点の車が入り組んだ道を走り出す。
通った道の色は黒から赤く光っていく。
そして、架かったり架からなかったりする橋も上手に進んで行き、車はゴール地点へ。
ゲートを潜り、響が奥へと走る。
次にあったのは1つのパンチングマシンのような物と3つの壁。3つの壁は大きさが異なっていて奥の壁になる程、壁は高くなっていた。
「このパンチングマシンを1発殴ってください。強さによって、走者が越える壁の数が変わります。壁を越えて、奥に進んでください。」
その看板の横に数値を表す表がある。
1つ目の壁:パンチ力100以上
2つ目の壁:パンチ力150以上
3つ目の壁:パンチ力175以上
そう巫がクスクスと笑う。
響は一瞬だけ睨み付けると、パンチングマシンに置いてあるグローブを左手に付けた。
瞼を閉じ、細く息を吐くと、段々と表情が険しくなってきて、貧乏揺すりのように地面を踏む。
人差し指を立て、ニッと笑う。
響は相当怒っているようすだが、巫はあまり気にしていない様子だった。
大きな音が鳴り、力の測定が始まる。
響の言った言葉にさっと巫の顔が青ざめる。
そして、「後で謝っとこ…」と小さく呟いていた。
パンチ力が「181」と出て、巫が笑顔で無言に。
3つの壁が全て崩れ、道が現れた。
その道を抜けて、交代地点に響が着く。
すっかり忘れてた…。
日月君が碧羽ちゃんを助けて死んだということは、誰かが代わりに走らないといけないんだ。
響が交代地点で少し困惑した表情を浮かべる。
後ろからは壊せなかった壁を必死に登ろうとしている走者達。
次の…最後の障害物は動物。
この6人の中で誰が走ったらいいの…?
第7区間〈力、技術〉樹神 響 クリア
↓
第8区間〈動物〉日月 和紀 死亡
[代走者]???
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。