部屋のドアが勝手に閉まり、鍵がかかる。
声がした方を見ると、拳銃が置かれている机の横に長い黒髪をポニーテールにした水色の瞳の少女がとても良い笑顔で立っていた。
『ロシアンルーレット』
当たりを避けて、生き残れ!
【ルール】
・6発中1発が本物。
・1人が死んだら終わり!
・順番は自由ね。
・あ、一周したら最初から!
【注意事項】
・頭に銃を突きつけて撃つこと。
・逃げ出すのは失格と見なすから気を付けて。
・例え同じチームでも自分以外を撃つのも失格!
なんて雑なルール説明なことで……
ルール説明が話し言葉で書かれていたことに驚く。
大雑把そうに見えたが、見たままだった。
まぁ、要は当たりを引かなければいいだけだ。
特に問題点はない。運だけなら自信がある。
相手チームの意見でジャンケンで決めることに。
その結果、順番は相手チーム2人の後に陽向、私の順に決定した。
つまり、私が1番当たる可能性が高いってことだ。
正直に言うと嫌だが決まってしまったからしょうがないと諦めることに。
震えた手で拳銃を手に取った男子が目を閉じて眉間にピタリとくっつけた。
そして、躊躇なくその引き金を引く。
カチリ…
私まで来たら確率は3分の1…。
結構、高いな…。
心の中で早く撃たれろと願ったがその願いは届くことなくカチリとだけ音がした。
相手チームは完全に安心したのか陽向に拳銃を手渡して今度は当たるように祈り始める。
陽向はもう覚悟を決めていたのかすっと側頭部に拳銃を押し付ける。
陽向が引き金を引こうとした時、私の首が一気に軽くなった。
軽なったと思うと今度は陽向が「うっ…」と小さく呟いたと思うと目をぱちくりとさせて拳銃を持つ手を見ていた。
私はまさかと思い、拳銃に手を伸ばす。
すると、布の感触がしてそれを引っ張るとクロが陽向の腕にしがみついて人差し指を握っていた。
首を必死に縦に動かして肯定の意思を見せるクロ。
その行動に陽向が驚いた顔をした。
私はクロを透明マントごと抱えると陽向がシリンダーを1発分ズラし、側頭部へ。
小さく息を吐いて引き金を引くと、カチリと金属の音だけが鳴った。
陽向から受け取った銃に一瞬だけ視線を移すと、私は片腕でクロを抱いたまま躊躇なく口を開けて脳天に向かって引き金を聞いた。
カチリと金属音、やはり私は運がいいらしい。
「素晴らしい!」と珠璃が楽しそうに手を叩く。
私は微笑んで相手チームに拳銃を渡した。
自分に回ってくると思わなかったのか表情は引き攣り、額には汗が滲んでいる。
さっきよりも分かりやすく手が震えている。
そんな彼はさっきと同じポーズで引き金を恐る恐る引いた。
カチリ、と金属音が鳴る。
その瞬間、彼は拳銃を投げ出して喜ぶ。
それ比べると残った男子は床に落ちた拳銃を見て、絶望の表情を浮かべて座り込んだ。
突然、自分の眉間に拳銃を当て笑いだした男子。
すると、蔑むような目でペアの男子を見た。
勝ち誇った笑みを浮かべる男子にはもう死なないという余裕がある表情。だが、いきなり笑いだしたのが気になってるのか少し表情は引き攣っている。
バァンッ!!!!
倒れたのは誠也と呼ばれた男子だった。
心臓部から血が流れ、崩れるように倒れる。
撃った男子はニヤニヤと笑いながら誠也君を見下ろしていた。
そう言うと、颯太と呼ばれた男子は立ち上がって、死んでいく誠也君を全く見ず珠璃の前に立ち、拳銃を机の上に戻した。
ずっと私と陽向は誠也君のことを見ていたが、誠也君はとても悔しそうに涙を流しながら、「千夏、ごめん。」と何度も呟きながら息を引き取った。
その瞬間、100tと書かれた大きな石みたいな岩みたいなものが颯太君の頭上に現れた。
重力に従い下に落下した石は容赦なく颯太君を押し潰して石を中心に赤い花が咲く。
珠璃は死亡を確認したのか、奥の鍵を開けた。
そう言って、珠璃は消えた。
あと2回もこんなミッションをやれって酷い。
そんなことを思いながら、陽向を見て私は奥の扉を開けた。
入る前と同じような白い壁が両側にそびえ立つ。
そう声をかけ合うと私は先へ向かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。