意味が分からず、みんな黙って答えを想像していると「パキッ…ピキッ…」とボールみたいな何かから音が聞こえるとヒビが入った。
そう呟いたとき、ヒビが一気に広がる。
一瞬ピンクの瞳が見えたが、殻が看板に落ちたときには陽向の持つ卵の中身は空だった。
みんなが不思議に思っている時、耳横でひゅっと風を切るような音がしたと思うと、いきなり肩にズシッと重みがかかった。
重くなった方の肩を見ると、そこには黒い何かが肩に乗っていた。
私は肩に手を伸ばし、ゆっくりと掴んで見えるように前に持ってくる。
両手に包み込まれているのは有り得なかったけど、どう見ても黒い体にピンクの瞳のドラゴンだ。
確かに起きた猫は蓮水の腕から降りて、響の周りをくるくると歩き回っていた。
完全に響に懐いている。
響の「じゃあ…いいか?」と声にみんかが賛成の声を出した。だから、響と巫のところには猫。
残りは犬、鷹、ドラゴン?の3匹。
蓮水が私の手を指す。
視線を自分の手に移した私は確かに蓮水が言ってることもおかしくはないと思った。
その小さなドラゴンは「キュルル…」と鳴きながら掌の上をピョンピョンと楽しそうに飛び回って遊んでいた。
パタパタと両腕を動かし浮いたりもするが、私以外の人のところに行く気配は全くない。
手を見ると、目が合ってドラゴンが首を傾げる。
その様子は普通に可愛かった。
周りを見ると、どの動物も人懐っこい性格なのか、犬のコロンはパタパタと尻尾を振って瑠奈ちゃんや東雲君に飛びつき、鷹のハヤテは運転席の近くで海凪を見ていた。すると、前を見ていた海凪が…
その声を聞き、響は「巫を叩き起す」と部屋へ。
私は蓮水と陽向に手伝ってもらい、倉庫にある非常食を船内で見つけた袋に入れることにした。
ハヤテは海凪と瑠奈ちゃん達が見てくれるが、クロは私から離れようとせず肩にしがみついてくるので渋々と肩に乗せたまま食料を詰める。
クロが初めて私から離れて蓮水の方へ。
蓮水の頭の上に乗ると、自分を捕まえようとする蓮水の手をひょいひょいと避けて、頭の上をぴょんぴょんと荒らしていた。
髪がボサボサになり、蓮水が大きな溜息を零す。
言葉が通じるのかスグにクロが私の肩に戻って来て再び肩が重くなる。
溜息を零しそうになりながらも我慢して、非常食を袋に移すと、クロが私が持とうとしていた袋の持ち手を掴み持って行ってくれた。
蓮水と陽向も看板まで重い荷物を持ってきたところで響が巫の背中を押して部屋から出てくる。
巫は看板の動物園状態を見て、少しの間固まっていたが状況を理解すると「面白いね」と一言だけ呟いていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。