第74話

白と黒
630
2020/05/11 11:00
霧雨 珠璃
結局、蓮水さんは主催者が何者なのかは知らなかった。脅され、殺された。
終夜 渚紗
何で蓮水の父親が脅されたの?
霧雨 珠璃
さぁ?偶然じゃない?もし、これが偶然じゃ無かったとしたら…ちょっと奇妙なことになる。
終夜 渚紗
奇妙?
蓮水 黎
…俺は終夜に選ばれたから21ゲームに参加することになった。必然なら終夜じゃなくて俺が選んだ方が確実…そういうことだろ?
霧雨 珠璃
そう。渚紗ちゃんならクラスの人が嫌いでマシな黎君を選ぶかもってなっても、必ずそうなるとは言い難い。
終夜 渚紗
だから、偶然…
盤の空いてる目はあと2つ。
つまり、それぞれが最後の一手となる。
霧雨 珠璃
物事には何でも白と黒がある。ゲームもそうだし人間もそう。どんなに良い人にも必ず黒い部分はあるし、悪い人にも必ず白い部分がある。真実が見えないこの21ゲームも必ず元凶がある。
珠璃が持つ最後の駒を置いた時、蓮水の手が微かに動いた。
蓮水 黎
……どういうつもりだ、霧雨。
霧雨 珠璃
最後の一手、早く置きなよ。
蓮水 黎
お前がそこに置いたら…
ぶつぶつと呟き、蓮水が唯一空いていたマスに駒を置いて裏返していく。
すると、盤は白に塗り変えられた。
終夜 渚紗
勝っちゃった…
霧雨 珠璃
おめでと!はい、これ。
白いカードを受け取るも蓮水は席を立たなかった。
蓮水 黎
さっきの右京と言い…何を考えている?あれ、お前勝てたはずだろ。
霧雨 珠璃
無理無理!勝てないって。
蓮水 黎
また嘘を…
霧雨 珠璃
早く行かないと失格にしちゃうぞ!
終夜 渚紗
それはやだ、蓮水。
蓮水 黎
……。
不満げな蓮水を引っ張り、私達は部屋を出る。
扉が閉まる間際、負けた珠璃がこっちを見て笑っているような気がした…




















血の匂いが充満する黒い部屋。
モノクロの全試合が終わった私は立ち上がって、座っていた椅子を持ち上げて下を確認した。
霧雨 珠璃
……。
あったのは大量の火薬と起爆装置。
予想通りのことに苦笑していると、壁に映し出される映像が変わった。
「霧雨珠璃。君の役目は終わりだ。」
霧雨 珠璃
…言われなくても分かってるよ。
「何?」
霧雨 珠璃
竜二君には本気で負けたけど…右京君と黎君のペアは勝たす気でいた。徹弥君も渚紗ちゃんも強い。絶対にこのゲームの真相を突き止める。
私には結弦君も知らないノルマがあった。
「5組中の3組を脱落させる」
それが生きるために私に課せられたノルマ。
結果、私が脱落させたのは徠斗君達と海凪ちゃん達。
他の3組は見事に通過した。

…でも、それで良い。
最後まで生き残る気なんてさらさらない。

進行役も結弦君だけでいい。
結弦君には私と違って帰る場所がある。
堕落した人生を送る私なんかよりも余っ程この記憶を持って生きる価値がある。
霧雨 珠璃
声にしなかった私の願いもきっとみんなが叶えてくれる。貴方がひっくり返る時が必ず来る。貴方が落ちるなら私は死んでも構わない。
この記憶が無くなろうと私は後悔なんてしない。
命をかけてみんなの背を押したんだから。

友達のいない私にとって、誰かと話すのは久しぶりで凄い楽しかった。
本当にただそれだけで…私は救われた。
霧雨 珠璃
さぁ、私の首を飛ばして殺せ。
「言い覚悟をしている、スグに殺そう。」
その文字を見て、私は目を瞑る。
首を爆発させるのか、それとも部屋ごと飛ばすのか、私には分からない。

死までの数秒、頭の中を過ったのはみんなが協力して必死に生き抜こうとしている光景だった。
霧雨 珠璃
……。
………みんなとこんな出逢い方じゃなかったら…
霧雨 珠璃
………友達、なれたかなぁ…
そんな自分らしくないことを最期に呟くと、首に熱を感じて私の意識はプツリと切れたのだった…

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