盤の空いてる目はあと2つ。
つまり、それぞれが最後の一手となる。
珠璃が持つ最後の駒を置いた時、蓮水の手が微かに動いた。
ぶつぶつと呟き、蓮水が唯一空いていたマスに駒を置いて裏返していく。
すると、盤は白に塗り変えられた。
白いカードを受け取るも蓮水は席を立たなかった。
不満げな蓮水を引っ張り、私達は部屋を出る。
扉が閉まる間際、負けた珠璃がこっちを見て笑っているような気がした…
血の匂いが充満する黒い部屋。
モノクロの全試合が終わった私は立ち上がって、座っていた椅子を持ち上げて下を確認した。
あったのは大量の火薬と起爆装置。
予想通りのことに苦笑していると、壁に映し出される映像が変わった。
「霧雨珠璃。君の役目は終わりだ。」
「何?」
私には結弦君も知らないノルマがあった。
「5組中の3組を脱落させる」
それが生きるために私に課せられたノルマ。
結果、私が脱落させたのは徠斗君達と海凪ちゃん達。
他の3組は見事に通過した。
…でも、それで良い。
最後まで生き残る気なんてさらさらない。
進行役も結弦君だけでいい。
結弦君には私と違って帰る場所がある。
堕落した人生を送る私なんかよりも余っ程この記憶を持って生きる価値がある。
この記憶が無くなろうと私は後悔なんてしない。
命をかけてみんなの背を押したんだから。
友達のいない私にとって、誰かと話すのは久しぶりで凄い楽しかった。
本当にただそれだけで…私は救われた。
「言い覚悟をしている、スグに殺そう。」
その文字を見て、私は目を瞑る。
首を爆発させるのか、それとも部屋ごと飛ばすのか、私には分からない。
死までの数秒、頭の中を過ったのはみんなが協力して必死に生き抜こうとしている光景だった。
………みんなとこんな出逢い方じゃなかったら…
そんな自分らしくないことを最期に呟くと、首に熱を感じて私の意識はプツリと切れたのだった…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。