第41話

強さこそ命
1,082
2021/02/17 10:14
槐 澪織
умереть!!!
抉られた木があった方向から少しボロボロになった澪織が飛び出してきたと思うと、巫に作ってもらった私と同じナイフから刃が飛び出す。
その糸は周辺の木を丸く囲むように引っかかり、柄を投げると神々に切り込む。
避けて勢いを使って、投げ飛ばされていたが糸に着地するように沈むとその反動でさらに速いスピードで切り込み、少し触っただけで神々は小さく呻き声をあげた。
神々 竜二
いっ…てぇな。マジで何なんだよ、お前の能力。
槐 澪織
……。
終夜 渚紗
ちょっと、澪織!ストップ!!!
作戦を完全に壊そうとしている澪織に声をかける。
頭にきているか話しているのは日本語じゃない。
と言って、私はロシア語を話せるわけでもない。
そして、脇腹を押さえて反撃に出ようとしている神々に突っ込んで攻撃をしようとしたとき…
蓮水 黎
止まれ。
背後からそう蓮水の声が聞こえたかと思うと、空中で澪織の体は止まってふわふわ浮いていた。
隣まで来た蓮水が人差し指を動かすと、浮いていた澪織が地面に降ろされて、手をかざし掌を下にして腕を下げると神々の周りの地面がビキッと音を立ててめり込んだ。
終夜 渚紗
澪織、大丈夫?
槐 澪織
Все в порядке……って日本語じゃないと分からないか…ついね…。
終夜 渚紗
分かる人はいるかもだけど、私は分からないや。
槐 澪織
取り敢えず、大丈夫だよ。
蓮水 黎
お前なんか簡単に殺せるとか死ねとか完全に作戦無視してただろ…
槐 澪織
無視するつもりは無かったし…
神々 竜二
……日本語、喋れんのかよ…っ。
終夜 渚紗
何で踏ん張ってんの?
神々 竜二
踏ん張らねぇと地面にめり込むからなぁ…長髪、お前は万有引力を発見した《ニュートン》だな?能力は"重力を操る"って言ったところか…
蓮水 黎
ご名答…
槐 澪織
何か名前がかっこいいからで思い出したんだけどさ〜、こいつの能力、多分《シュヴァルツシルト》だと思う。ブラックホール発見したっていう。
神々 竜二
取り敢えず、お手上げだ…。話聞くからこの重いのやめろ。
何が面白いのか再び神々がくっくと喉を鳴らす。
蓮水は数秒間、止まっていたが腕を下げた。
重さから解放され、ぴょんぴょんとその場をジャンプする神々。このままいても逃げられる。
そう思った私は話を切り出した。
終夜 渚紗
手を組んでさっさと終わらしたい。それが私達が殺さずにいた理由。
神々 竜二
へぇへぇ、何だそれで俺に組めと?
終夜 渚紗
そう。
神々 竜二
ん〜、いいどさ。俺への得が少ない?
終夜 渚紗
まぁ、無いね。
神々 竜二
そうだな〜。黎はそいつのペア?
蓮水 黎
ああ…
神々 竜二
じゃあ、気に入った黎にペアのやつがいるんだったら、これが終わった時にもう片方の澪織と組ませてもらうなら組んでもいいかなー。
槐 澪織
А? умереть.
終夜 渚紗
ねぇ、蓮水。さっきから同じような単語繰り返してるけど何言ってるの?
蓮水 黎
死ね。
終夜 渚紗
敵意剥き出し…
神々 竜二
えぇ〜、いいじゃん!組もうぜ!
槐 澪織
ちょっと2人とも、マジでこいつ殺していい!?
終夜 渚紗
ダメ。
蓮水 黎
予定が狂う…
神々 竜二
はい、けって〜い。
神々が澪織を担ぎ、私達に参加者リストを見せる。
「どれ潰せばいい?」と言われて私は私達のグループと煮雪君以外を指した。
一青さんを含む3人の顔写真を見て、名前を呟き、軽く頷くとキョロキョロと周りを見る。
神々 竜二
どっち行ったか知ってる?
終夜 渚紗
知らない。
槐 澪織
取り敢えず、降ろして!!!
神々 竜二
っ…!おい、背骨折れんだろ。
梵 綾翔
あっ、やっと見つけた。
終夜 渚紗
梵君!
梵 綾翔
綾翔でいい。それよりも、その様子だと神々の件は大丈夫そうか?
神々 竜二
このゲームが終わった時に、澪織と組むのが条件な。
槐 澪織
組みたくない!
梵 綾翔
一青達の場所、見つけた。
神々 竜二
ちょうどいい、教えろ。こいつ借りて1時間で終わらしてやる。
梵 綾翔
ああ、陽向が連れていた鷹が案内するからついて行け。
神々 竜二
りょーかい。
上空を過ぎた陽向達のペットのハヤテを見た神々が走り出す。
観念したのかここまではっきり聞こえるほど大きな舌打ちをして澪織が神々から無理矢理降りると、その後を追って茂みに入り見えなくなった。
蓮水 黎
仲間には出来たけど…
終夜 渚紗
澪織に可哀想なことしたね…
蓮水 黎
可哀想より生き残ることが優先…そこはアイツも分かってるだろうさ…
終夜 渚紗
まぁね。
蓮水 黎
一応、後で謝っとこう…
終夜 渚紗
うん…
梵 綾翔
神々が認めてんなら大丈夫だな。1時間で終わる。他の奴らも呼んだからスグに導かれて来る。巫は蓮水が救い出してくれてボロくなってたけど《ナイチンゲール》でスグに治る。何があったのか聞くなら槐に聞いた方がいい。
終夜 渚紗
そうするよ…どうする?みんなであの2人の後を追う?
蓮水 黎
いや、アイツらから見ると俺達は足でまといになる可能性の方が高い…自分の身を守る方がいい…
やがて、他のみんながやって来る。
巫は少し拗ねているようだったが、傷は陽向によって完全に治されていた。
上手に話が進んだことをみんなに話すと、勝てると確信したのか会話の内容がトゲトゲしいものから移動中とかにしていた普通の内容に戻る。
八重桜 夢奈
ほんと良かったですわ…
雅楽 海凪
澪織、盛大に巻き込まれたなー
巫 悠真
神々君、ほんと酷かったよ〜…。
終夜 渚紗
連れ去られた後、何があったの?
巫 悠真
拘束されてー、みんなのことを凄い聞かれてー、言わないと殴られてー、澪織ちゃんはロシア語しか話さないって方法で対抗したせいで僕が凄い聞かれて叩かれた。
樹神 響
話したのか?俺達のこと。
巫 悠真
ううん、話さないよ。僕はふざけたりからかったりはするけど、仲間を売るようなことは絶対しない。
蘭 陽向
お前……意外と良い奴かも。
巫 悠真
意外とって何!?てか、その言い方って陽向君僕のことどういう風に思ってたわけ!?
樹神 響
代弁してやる。巫はただふざけてばかりのヤバい奴ってことだろ。
巫 悠真
それ、ほぼ響の意見でしょ…。
樹神 響
まぁな。
ピッーーーーーーーー!!!!!
大きく鳴り響いたブザー音。
そのブザー音が聞こえたと思うと、見えない天井から「ザッ…ザザッ…」とマイクを繋ぐ音がした。
「終了、最初の場所に戻って来て」と短く要件を伝えて放送は終わる。
蓮水を見ると、既に地図を持っていて現在地を確かめていた。
そして、地図を頼りに最初の場所まで戻るとそこには進行役の3人がいた。
霧雨 珠璃
おー、凄い凄い!関東代表はほぼ生き残ってるじゃん!
羽柴 希弥
珠璃さん、うるさいよ。
巫 悠真
あれ?あと3人は?
胡蝶 結弦
まだ来てない。
羽柴 希弥
まぁ、生き残りが全員集合したところで次に行くから待ってください。
終夜 渚紗
こっちって分かればいいけど…
神々 竜二
そんくらい分かるっつーの。
木々の間から頭の後ろで手を組んでいる神々と澪織を背負う煮雪君が歩いてくる。
煮雪君は呆れたような顔で神々を見た後に大きな溜息を零した。
姿を確認して結弦が端末を操作し始める。
煮雪 徹弥
はっ、何が分かるんだよ!真逆の方向いて歩き始めたくせに!
神々 竜二
そうカッカすんなって。
煮雪 徹弥
脳内まで筋肉かよ…この子、いないと永遠に森の中だったんだぞ!?
神々 竜二
あ〜、うっせーうっせー
羽柴 希弥
1ついい?その背負ってる子、1mmも動いてないけど大丈夫?
煮雪 徹弥
ああ、毒サソリに刺されたけどここに来る途中で解毒剤は打ったから大丈夫だと思う。
終夜 渚紗
これで12人…
胡蝶 結弦
揃ったね。他のところは全部殺し合いになってもう終わってるんだよ。だから、早くその着続けた服洗濯して風呂入って次のゲームの準備して。
いきなり現れたドアが開くと、そこは赤と青の垂れ幕に「ゆ」と書かれた入口が2つ。
珠璃に急かされて響が煮雪君から澪織を引き取り中に入ると脱衣所があって、そこは温泉だった。
脱衣所には洗濯機が置いてある。
雅楽 海凪
おー、風呂かー
終夜 渚紗
しかも、温泉。
八重桜 夢奈
今思えば、何日もお風呂に入っていませんわね…
樹神 響
澪織、起きろ。
槐 澪織
う〜ん……
終夜 渚紗
さっさと入ろ。
そう話すと、私達は温泉に入って久しぶりの温かいお風呂に体を温めたのだった。

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