廊下の奥まで着くと、私は慎重にゆっくりと部屋の扉を開けた。中は真っ暗で何も見えない。
東雲君が腕だけを部屋の中に入れ、手探りで電気をつけてくれる。
廊下から見た感じは誰もいない。
部屋には1番奥の壁の前に積み上げた非常食。
そして、非常食の山の右側にさっき入ったときには無かった鉄板が落ちていた。
恐らく、あの鉄板が落ちたときに大きな音が鳴ったんだろう。
恐る恐る、部屋の中へ。
鉄板が落ちていること以外には、特に変哲は見られない。
大丈夫かな、と思ったところで東雲君が不思議そうな顔で鉄板を見下ろした。
私も東雲君につられて鉄板を見た後、視線を上に上げて、天井を確認した。
そこには子供が通れそうな通路がある。
そのとき、背後から視線を感じた。
東雲君は私の前で落ちた鉄板を見ているから、この部屋にまだ何かがいることになる。
警戒しながら、バッと後ろを向くが誰もいない。
でも、確実にこの部屋には何かがいる。
私が感じた視線について話し合っているとき、今度は私達の後ろ、非常食の方から物音がして見ると、非常食がコロコロと足元に転がってきた。
船だから非常食が動く可能性はあるが、そこは海凪の指示で簡単には崩れない積み方で積んだからそう簡単には崩れないはず。
分からない何かから背後を取られないように、壁に向かって一歩一歩後ろに下がる。
すると、ぐにっとした柔らかい感触が足に伝わり、私は足を即座に上げる。
シーーーーーーッ………
空気が抜けるような音が聞こえ、私は今の感触と現在進行形で聞こえる音から連想出来た"何か"を想像して、固まる。
確認しようとゆっくりと後ろを向いた瞬間、私は"何か"を避けるために横に飛んでいた。
あの鉄で出来ている通気口の蓋を落として、船の中にいたのは結構大きい蛇。
踏んだことで激怒しているように見えた。
私に噛み付こうとして失敗した蛇がもう一度攻撃をしようと私の方を向く。
蛇が足に巻き付き、私はバランスを崩して勢いよく転んでしまった。
スルスルと腕を伝ったと思うと、ヒヤリとした感触を首に感じる。
その瞬間、息が出来なくなって、目の前がぼんやりとし始める。
東雲君が私から蛇を引き剥がそうとしているのは分かるが、全く取れる様子は無い。
これは…ヤバいかも…っ…
そのとき、私は本気で死の覚悟をしたのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。