歩く女子を追いかける蓮水に追いつくと、私は透明マントを取って蓮水を止めた。
すると、何で止めるんだよって言いたそうな表情で私を見てくる。
それでも、私は今回ばかりは場所的にもヤバい気がして止める。
そのとき、廊下の奥から足音が聞こえてきた。
まだ理解をしきれない女子が咄嗟に私と蓮水をすぐ近くの扉の奥に押し込んだ。
入ったのは武器倉庫で手をついたときの目の前には矢の先があって、息を呑む。
蓮水は上手い具合に受身を取って、スグに廊下の外の会話を聞こうとしていた。
足音が去ったところで扉が開く。
そこには銀色の髪を青のリボンで一つにして、水色の瞳を片目だけ見せる女子。
服装はへそ出しタンクトップに緩めの黒いパーカーを羽織って短パンとラフな格好。
腹筋は一見はなく、ただの何処にでもいそうな女子高生だ。
彼女に連れられ『Champion控え室』と書かれた部屋に入ると、大量の菓子と戦闘系ゲームが置かれていてもはや自分の生活部屋だった。
「そこら辺に座って。」と言われ、私はソファに座り蓮水は無視して端に立つ。
そして、彼女はベッドにダイブしたところで話を切り出してきた。
澪織が不思議そうな声を出した時、私と蓮水のスマホが同時に着信音を鳴らした。
断りを入れてスマホを見ると、21ゲームからメールが1件届いていた。
【鵬磨高校 終夜 渚紗様、蓮水 黎様】
『仲間探し』の契約条件です。
仲間候補の方に必ず契約前にお見せ下さい。
・御本人の意思がある場合のみ契約が出来ます
・生徒手帳を所持してください
・21ゲームについての説明をプレイヤーから聞いた上で意思確認の方をお願いします
以上の契約条件を全て承諾し、21ゲームに参加する意思がある場合は明日の正午丁度に仲間になるプレイヤーのどちらかと待機してください。
「放課後、遊びに行こー」「いいよ!」くらいのノリでOKを出した澪織。
それには流石の蓮水も声を漏らす。
ワクワクしたような楽しみにしているようなそんな目をキラキラと輝かせている澪織を見ていると、何処か巫の姿と重なった。
巫と重なるともう大体の性格は予測出来る。でも、一応聞いといた方がいいかな。
そのとき突然コンコン、とノックの音が聞こえると澪織は「はいは〜い?」と返事をしながら、私達に視線を移すとソファの後ろとベッドの後ろを指す。
私はソファの後ろへ、蓮水はベッドの後ろに隠れたところで控え室のドアが開いた。
澪織がベッドの上に投げられていたバッグの中から迷彩柄のスマホを取り出す。
連絡先を教えると、私は澪織に住所を送る。
ちゃんと確認出来たのか「OK!」と発音良く言って澪織はスマホをベッドに投げた。
澪織が他の人に怪しまれないように電気を消して、部屋を出て行く。
廊下に足音が聞こえなくなってから私と蓮水はベッドの下の隠し通路から外へ。外はビル近くの公園の植物に隠されるようにされた扉に繋がっていた。
そんなことを話しながら私達は駅へ。
私が家に帰った頃にはもう23時を過ぎていて、お母さんにとんでもなく怒られた。
謝った後の夜ご飯中に今日のことについて聞くと、お母さんは不思議そうに「今日は午前授業って言ったの渚紗じゃない。」と言われた。
どうやら、聞く限りだと私は午前授業で帰って来て眠いからって言って寝てたらしい。
何がどうなってるのか全く分からないけど…
21ゲームに勝って、早くこの世界に戻って平和な日々に戻る、ただそれだけの話だ。
そのような考えに辿り着くと、私はずっと寝ていたベッドに潜り込み、眠りについたのだった…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。