船で何日か経ったはずなのに…
何でまだあの最初の日付のままなんだろう…
…あ、それよりも、早く仲間探しをしないと。
そう思い、スマホを取り出す。
だが、そこで私はあることに気が付いた。
私は陽向に海凪の連絡先を送ったりしたけど、私はペアである蓮水の連絡先を知らなかった。
そのことに気付いた私は数秒停止すると、大きな溜息をつきながらベッドに転がる。
その時、1階にある固定電話が鳴る音がした。
スグに鳴り止まないことから今、家にお母さんはいないのだろう。
仕方なく、ベッドから起きると早足でリビングへ。
ずっと鳴り続ける受話器を取り「もしもし。」と言うと、電話から聞き覚えのある声が聞こえた。
電話を切り、今度は海凪に電話をかけてみる。
そこからまさかの海凪の世間話が始まった。
ずっと海凪のネタが切れないから電話が続き、気付いたら時計が19時半を示している。
流石にそろそろ出ないと間に合わないため、海凪に謝って電話を切ると急いで準備。
クロは斜め掛けバッグの中に入ってもらう。
そして、充電器からスマホを抜くと走って学校へと向かった。
蓮水が歩き出し、私は慌てて後を追う。
駅で電車に乗ると、都会へ向かった。
降りたのは治安が悪いことで有名な地区。
本当にここでいいのか、と心配になりながらもついていくしか私の道はない。
蓮水はスマホを見ながら歩いて行くと、1つのビルの前で立ち止まった。
蓮水が階段を降り、私は後ろを歩く。
地下に着き、長い廊下を歩くと見るからに外国人の強そうな男性が一番奥の赤い扉と黒い扉の前に立ちはだかるように立っていた。
すると、蓮水が…
そう言うと、外国人は赤い扉を開けて私達を中へと入れてくれた。
扉をくぐると次は2人の外国人が待ち構えている。
すると、両腕を広げる動作を私達にして荷物をトレーに置くようにジャスチャーで促した。
言われた通りに置くと、所持品確認をされる。
蓮水には男性外国人、私には女性外国人がボディチェック。その途中で私は斜め掛けの中に拳銃と変なナイフを入れっぱなしにしていることを思い出す。
そして、同時にクロの存在を思い出した。
案の定、男性がクロを持ち上げ私達に尋ねる。
他の外国人も興味津々に見ているが、まだ本物だとは思っていないようだ。
固まって1ミリも動かないクロ。私はそのままでいてくれと心の中で願う。
流暢な英語で外国人に嘘をついた蓮水。
普段は英語の授業で「読めません」とだけ言って座る姿とは全く違う。
おもちゃと言われてさらに興味を持った男性が凄い上から下からクロを見る。
クロを入れた鞄を返してくれ、私と蓮水は奥へ。
奥の豪華な扉をスーツの人が開けると、激しい歓声が耳に届いた。
中は観客席。そして、観客席に囲まれているのはフェンスで四方を囲まれたステージで剣を振るう大柄な男。
ボロボロで剣を振るう男を無傷の銀髪に水色の瞳の外国人の女子が軽々と避ける。
フェンスを踏み台にフワリと浮くと、男の顔面に膝蹴りをキメてから、お腹に肘打ちをキメる。
すると、男は後ろに倒れて動かなくなった。
会場は大盛り上がりで紙が何枚も空中に舞う。
勝者の女子が手を振りながら退場する。
蓮水はそれを見た途端に走り出して、追いかけた。
私はまさかと思い、声をかけようとした時にはもう既に蓮水は通路の壁を乗り越えて女子のことを追いかけに行った。
会場は敗者が運ばれるのに注目していたために、運良く警備員には見つからなかった。
しょうがなく私は鞄の中からあのときクロが武器を包んでいた透明マントを引っ張り出し頭から被って周りから姿を消すと蓮水の後を追った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。