第71話

圧倒的王者
604
2020/05/22 11:28
陽向の時より試合は長引いていた。
煮雪 徹弥
どっちが優勢?
蓮水 黎
互角、だな…さっきは陽向が完全に劣勢だったけど今回はまだ変わらない…
さっきの陽向は頭を抱えていたが、神々は楽しそうに笑いながら一手を打っていた。
全くルールが分からない澪織は神々の椅子の横で連れて行ってしまった黒猫と遊んでいる。

そんな2人に対し、珠璃も笑ってはいるもののその笑みはさっきとは何処か違う。
終夜 渚紗
…先に次に行く方決めない?
銀鏡 右京
決めるまでもないよ。次は僕達、黎君達にはトリを飾って貰わないと。
蓮水 黎
言ってる意味が分からないな。
銀鏡 右京
僕、黎君の死体なんて見たくないし。
終夜 渚紗
負ける前提…
銀鏡 右京
まぁ、大丈夫だと思うけどね。渚紗ちゃんも強運の持ち主だから何となくの位置で勝てそう。
終夜 渚紗
あれって運でどうにかなるものじゃないような気がするけどね。
銀鏡 右京
徹弥君はどっちがいい?
煮雪 徹弥
どっちでもいい。先でも後でもやることには変わらない。
銀鏡 右京
じゃ、僕達先で。一応勝つつもりだけど無理だったら黎君、僕の死体見ながら頑張ってね。
蓮水 黎
不吉。
右京君がにこやかに言った言葉に蓮水が分かりやすく溜息を零す。
すると、ガラスの向こうから…
神々 竜二
チェック。
霧雨 珠璃
ん。
神々の一手に珠璃が不思議そうに駒を動かす。
神々 竜二
チェック。
霧雨 珠璃
…あれ?
さらにチェックと言われて、珠璃がモノクロの試合が始まって初めて首を傾げた。
霧雨 珠璃
う、うん…
神々 竜二
チェック。
霧雨 珠璃
………待って、これ…
その言葉と同時に珠璃の笑みが崩れた。
それでも、珠璃は白い駒を取ると横に動かす。
槐 澪織
チェックチェック何言ってるの?
神々 竜二
安心しろ。これで…
ルールを知らず意味の分からないことを連発していると思っている澪織が聞くと、神々は答えながら笑って黒い駒を置いた。
神々 竜二
…チェックメイトだ。
終夜 渚紗
嘘……
奥の壁の映像を見て、私は目を見開いた。
さっきまで互角だったのに、神々がチェックという度に長期戦で減っていた白い駒はさらに減って、1番最後はキングしか残っていなかったのだ。
霧雨 珠璃
うわあぁぁぁ……完敗、私の負けだぁ。
神々 竜二
俺をただの戦闘狂バトルマニアと思うなよ。
霧雨 珠璃
だね…ほんと驚き。私、ゲームにおいて1度も負けたこと無かった。凡ミスとかじゃなくて完全に詰められるなんて…
キングしかいないじゃん、と盤を見て笑う珠璃。
少しの間笑うと、珠璃は白いカードを神々に渡した。
神々 竜二
何だこれ?
霧雨 珠璃
実はそこの角に扉があるの。それを使えば1度だけ開くことが出来る。
胡蝶 結弦
先は休憩室になってるから待機。テーブルの映像は見れる。音声は無いけど。
神々 竜二
へぇー…まぁ、了解。
槐 澪織
痛っ!もっと優しく扱って!!
神々 竜二
俺、片腕しか空いてねーし、逆に両腕だと抱えるってことになるぞ。
槐 澪織
……我慢する。
神々は右腕で澪織を担ぐと白い部屋を向く。
神々 竜二
お前らだし特に言うことはねーな。
煮雪 徹弥
ははっ、興味無いからか?
神々 竜二
いや?お前らなら大丈夫だろ。じゃ、お先にー
槐 澪織
みんな頑張って〜!うっ…
神々は当たり前のように言って部屋の角へ。白いカードを翳すと壁が動き奥へと進めるようになった。
ちなみに私達に声援を送ったところで澪織は黒猫に思いっきり頭を踏み台にされ、背中を黒猫を乗せる台に変えられ……

まぁそうして、圧倒的王者達神々と澪織と黒猫は黒い部屋からいなくなったのだった。
胡蝶 結弦
負けてんじゃん。
霧雨 珠璃
いやぁ、竜二君攻撃ばっかしてきて、防御してたらいつの間にかね…
胡蝶 結弦
“攻撃は最大の防御”ってことでしょ。
霧雨 珠璃
あ〜…言われてみれば、竜二君って防御しないね。それが戦い方か〜…
胡蝶 結弦
まぁ、何でも良いよ。次は?
銀鏡 右京
僕と徹弥君だよ。
立った2人は黒い部屋へ。
白い部屋には私と蓮水だけが残された。
煮雪 徹弥
この中で試合するのか…血の臭いが…
胡蝶 結弦
それは進行役も同じで早く出たい。で、どっちが何で戦う?
銀鏡 右京
僕が先にやる。
ペアである煮雪君の返事を聞く前に右京君は微笑んで席に着いた。
横目に蓮水を見ると、やはり少し心配なのかじっと右京君を見ている。
銀鏡 右京
珠璃ちゃん、オセロで勝負だよ。

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