陽向の時より試合は長引いていた。
さっきの陽向は頭を抱えていたが、神々は楽しそうに笑いながら一手を打っていた。
全くルールが分からない澪織は神々の椅子の横で連れて行ってしまった黒猫と遊んでいる。
そんな2人に対し、珠璃も笑ってはいるもののその笑みはさっきとは何処か違う。
右京君がにこやかに言った言葉に蓮水が分かりやすく溜息を零す。
すると、ガラスの向こうから…
神々の一手に珠璃が不思議そうに駒を動かす。
さらにチェックと言われて、珠璃がモノクロの試合が始まって初めて首を傾げた。
その言葉と同時に珠璃の笑みが崩れた。
それでも、珠璃は白い駒を取ると横に動かす。
ルールを知らず意味の分からないことを連発していると思っている澪織が聞くと、神々は答えながら笑って黒い駒を置いた。
奥の壁の映像を見て、私は目を見開いた。
さっきまで互角だったのに、神々がチェックという度に長期戦で減っていた白い駒はさらに減って、1番最後はキングしか残っていなかったのだ。
キングしかいないじゃん、と盤を見て笑う珠璃。
少しの間笑うと、珠璃は白いカードを神々に渡した。
神々は右腕で澪織を担ぐと白い部屋を向く。
神々は当たり前のように言って部屋の角へ。白いカードを翳すと壁が動き奥へと進めるようになった。
ちなみに私達に声援を送ったところで澪織は黒猫に思いっきり頭を踏み台にされ、背中を黒猫を乗せる台に変えられ……
まぁそうして、圧倒的王者達と黒猫は黒い部屋からいなくなったのだった。
立った2人は黒い部屋へ。
白い部屋には私と蓮水だけが残された。
ペアである煮雪君の返事を聞く前に右京君は微笑んで席に着いた。
横目に蓮水を見ると、やはり少し心配なのかじっと右京君を見ている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。