お昼休憩になった時、私は興奮していた。
初めての合同バンドでの練習は新鮮だった。
自分のバンドで演奏するのとは比べ物にならないほどの迫力があった。
木管の音圧に金管の重音が心地良かった。
2人と会話をしながら渡り廊下を歩きながらお弁当が入った鞄が置いてある場所へ歩いた。
山田先生は今回の合同バンドの指揮を担当する春水南中学校の先生だ。
サバサバしていて気さくで話しやすい。
結局その後はバンド紹介を引き受けることにした。
最初で最後だからいいかなと思った。
そう言って職員室へ向かった山田先生。
そんな山田先生を見送って口を開いた幸太郎。
これが私と翔の出会いだった。
幸太郎が指差した先にいた男子。
それが翔だった。
初めて翔を目にした私。
彼はとてもぽけ〜っとしている人だった。
どちらかと言うと私は人見知りだ。
その時は気まずくてただ笑うことしかできなかった。
翔は気だるげに私達とは反対方向へ歩いていった。
独り言を喋りながら。
陰キャとはまた違う雰囲気。
独特の雰囲気。
何か違う雰囲気。
伝わりにくい雰囲気。
どんな人なのだろうか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。