――前回説明したとおり、俺がそらのことを
"可愛い"とか色々思っても、別におかしくないので。
柚香さんはそらの護衛として俺を連れていかせたんだろうし。
好きなように考えさせてください......。
――――――――――――――――――
てか、ネットで予約してたなんて俺も知らなかった。
看護師は直接やらないといけない手続きとかをすぐ
済ませてくれたし。
今日って、もしかして――。
その声で思考が一旦とまった。
その言葉でそらはゆっくり歩き出す。
診察室は............『01-02』のようだ。
......ってことは、川嶋か?
あいつって確か、せらも診たやつだよな......。
あんまり信頼性がないんだけど。
......と、1人の看護師が俺に近づいてくる。
やはり、そうだったか。
俺とそらが戸籍上だけの"いとこ"という関係なのは、
出産時に入れ違いがあったからだ。
たまたま同じ日に産まれた男児と取り違えられたらしい。
――それに気づいたのは6歳の頃。
何故今まで気づかなかったのか、という感じではあるけど、
すごくはやい方だと聞いた。
普通は、成長しきってから気づくものだ、と。
その段階で、両方の親は俺達を元の家庭に戻せば、と思った。
だけど意外にも友達ができ、環境にもほとんど慣れはじめて
いたので、それをやめることにしたそうだ。
替りに、数年毎に対面するという条件を設けた。
そしてその日は、俺達には知らされない――。
そう告げると、看護師は優しく微笑んだ。
対面日の担当をしてくださるのはいつもこの看護師だ。
だから心をゆるせる。
......対面相手は、ちょっと心をゆるしたりはできないけど。
そう言って悠斗は苦笑する。
苦笑というか、本気の笑いが7割くらいに思えるが。
この軽いノリ......ほんと嫌なんだよな。
悠斗は数年前から関西のほうに住んでいると聞いたけど、
たったそれだけで向こうの住人のように変わっている。
こいつの適応力は羨ましいかぎりだ......。
そう言って声を潜め、顔を近づけてきた。
......そらのことか?
状況的にそれ以外考えられないけど......。
そんな騒ぐことじゃないだろ......。
てか見られてたとか......最悪............。
まあどうせ
悠斗はそう言ってフリーズ。
さすがいとこ。
そらと反応が似てるな。
......にしても驚きすぎだと思うけどな。
あ、俺の予想では、この後うるさいのがきそ
ほらな......。
めんどくさいんだよ、ほんと。
何故かものすごく引かれてるんだけど......。
悠斗は先程俺につねられたところを擦りながら続ける。
まさか、知ってたとは。
前会ったのは2年くらい前だし、最近は連絡とかも取り
合ってなかったし、知らないと思ってた......。
ま、知ってるほうが話しやすいけど。
そういうことか......。
そう言うと、悠斗はほっとしたように息をついた。
悠斗は相変わらず、せわしなく部屋を出ていった。
......そういえばあいつは、せらが居なくなったこと、
知ってるのか......?
......まあ、直接言うことでも、ないか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。