第31話

見失ってしまった 5
16
2019/02/12 09:32
――もし。
























せら本人が、こうなった原因を知っているなら。





覚えているなら。

































坂倉 悠斗
......辛く、ないのか?
相川 せら
......え?何が?
せらは、俺が突然言い出したことに戸惑とまどってる。




急に言われても訳わかんないしな、そりゃそうだ。
坂倉 悠斗
今の生活が
相川 せら
んー......そうだなあ......
せらは膝の上の辞書を再びめくる。

た行のページを開いた。
相川 せら
つら......い、い......あ、あった
そのページをゆっくり読むと、せらは言った。
相川 せら
つらい......ってことは、ないよ
坂倉 悠斗
......意外
相川 せら
え?
坂倉 悠斗
いや、結構そういう思いを
してるんじゃないかと思ってたから
相川 せら
あ〜......しんぱいさせちゃった?
坂倉 悠斗
まあね?
相川 せら
そっかあ〜......ごめん、ね
坂倉 悠斗
ううん
相川 せら
......この言葉も、この紙を読むしかないから
ニセモノなのかもしれないけど......ほんとに、
ごめんね
坂倉 悠斗
......謝ることじゃないよ
相川 せら
ふふ。ありがとう
坂倉 悠斗
ううん
相川 せら
......ねえ、君の名前なんだっけ?
坂倉 悠斗
ゆうと、だよ
相川 せら
この紙に書いてある?
坂倉 悠斗
書いてないかも
相川 せら
なんで?
坂倉 悠斗
俺は、そういうものに名前が書かれたりする
ほどえらいわけじゃないから
相川 せら
そういうものなの?
坂倉 悠斗
うん
相川 せら
じゃあ......あの人の名前は?
坂倉 悠斗
......書かれてないよ
相川 せら
そっかあ〜......
せらは少し悲しそうにページをめくってる。







......ごめんな。


あいつの名前は漢字で1文字だから、せらからしたら書かれてることになるのかも。





でも。




あいつのことは忘れてほしいんだ......。




だから、言えない。




ごめん。
































――それからしばらく、ゆっくりとしたペースで話をして。

気づいたら、帰る時間だった。
相川 せら
ねえ、ゆう......?
坂倉 悠斗
ゆうと
相川 せら
......ゆうと、今日は終わりだよ
坂倉 悠斗
......
相川 せら
......もう、川嶋先生が戻ってくるよ
坂倉 悠斗
......そっか
せら......あいつのこと覚えてるってことは、結構嫌いなの?

俺もあいつは嫌いやわ。(^ω^ )
坂倉 悠斗
じゃあ、今日は帰るわ。
ありがとうな
相川 せら
......またその変な......
坂倉 悠斗
ごめんごめん。じゃあな
相川 せら
うん。また今度ね。
おやすみ、ゆうと
坂倉 悠斗
っ......ああ、おやすみ、せら



最後に確認するように名前を言って。



泣きそうな顔でこちらを見つめて。



......俺が演技をしないでいられるのは、君の前だけなのに。



これ以上演じたくないのに。























またこうやって本当の自分を閉じ込めて、笑って。




あとちょっとの最悪な未来から目を遠ざけてしまう。



























そんな俺は、どうしたらいいんだろ?
































これから。














プリ小説オーディオドラマ