悠斗と別れ、ロビーの方へと向かっていくと、そこのソファに
座るそらの姿が見えた。
もう終わってたのか。
意外と早いな。
......それにしても、なんか浮かない顔してる。
暗いからそう見えるのか?
確かめようがないので、俺はとりあえずそらの隣まで行くこと
にする。
驚いたように肩を揺らしたそらは、こちらを向き、はにかむ。
暗いから表情が曇って見えたと思ってたけど、そうでは
なかったらしい。
少し元気がない感じがする。
......どうしたんだろ。
眠いとか?w
......なんとなく目がとろんとしているのも、
つい可愛いと思ってしまう......。
ダメだダメだ、普通にしろ。
平静に。
......気づかれたら、ダメなのだから。
この関係に気づかれたら、今までの努力が全てパアだ。
せらとの約束も。
そらは袋に記載された文字を隠すように手を置いている。
だからさすがに病名とかは分からないし、聞くつもりもない
けど、
多分、そらもあの病気なんだ。
だから自分もそうなるんじゃないか、と不安になってるん
だろうな。
そらも、か。
............そういえば、
"せらが患ってしまったのだから、そらも同じようになって
しまってもおかしくない"
あいつが......悠斗が、帰り際にそう言っていた。
双子が1番遺伝しやすいことは、もうネット上に上がって
いる。
だから俺だって分かってたけど......やっぱり、現実を直視
するのは苦手だ............。
......この表情を見れるのも、もう少ないのか。
ドラマとかで聞いてたりした言葉だけど、自分がそれを考える
のは、考えてしまう立場になったのは、怖い。
また、忘れられる?
......嫌われる?
............《嫌だ。》
そらがもしあの病気なら、俺を忘れるのは、
嫌うのはすぐだろう。
あの病気は、身近な存在の記憶をすぐに奪う。
《やめてくれ、本当に。もう、これ以上は。》
......いつかそうなるなら、この子を最期まで思えるように、
しよう。
《......自分がそれに耐えられると思ってるのか?》
......せらのためにも、悠斗のためにも、だ。
《自分のためじゃないのか?》
《あの子のためじゃないのか?》
......もちろん、そうだ、そうなんだよ。
《......お前はやっぱり、嘘つきだな。》
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。