あれから、そのまま病院へと着いた。
......着いてしまったという方が正しいかも。
私は診察券を受付の看護師に渡し、
手続きを進めているところ。
そういえば診察券を持っていないのではと私が疑っていた
渉は、ネットで先に手続きを済ませていたらしい。
......おばさん、どうせなら私もそうしておいて欲しかった。
そして慌ただしく作業しているこの看護師の方は多分新人。
夜間ということもあり、人は少ないので急ぐ必要などは
特にないけど、できればはやく帰りたい。
なのでもう少しはやくして頂きたいなあ。
......とか思っているうちに手続きが済んでいた。
......手渡された紙には、『01-02』と表記されている。
その下には、『担当医 川嶋』。
川嶋先生、か。
そう言って頭を軽くさげると、看護師はほっとしたような息をついた。
すぐに診察室に向かうことを伝えようと、渉の姿を探す。
――いた。
階段近くの椅子に座っている。
......少し離れたとこから声をかけてみたが、反応がない。
聞こえてないのかな......?
......でもあんま動きたくないしなあ。
ちょっとだけ寄れば聞こえるかな。
近づいてみたけど......また無反応。
まさか、寝てるとか?
いやいやいや、さすがにないでしょ。
電車であんなに寝てたのに。
......。
......さっき考えてたこととかを、フラグって言うんだろうな。
うん。
皆さんお気づきのとおり。
寝てました。
ほんとに迷子にさせてやろうか。
......どれだけ寝たらいいんだろうね。
電車だけでも多分1時間半近く寝てたよ?
多分こいつの事だから超健康的な生活を送ってきたから
普段は寝てる時間なんだろうけど。
それでも数分で眠りに落ちるものなのかなー?
渉くーん?
......気持ちよさそうに寝やがって。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!