第34話

遠くへ── 2
22
2019/03/27 10:23
──そらと病院へ行った日。

病院へ着く前に、そらが"アイシン病"という確証を得られた。



何かを"好き"だと思うことが出来なくなっていた、からだ。




"アイシン病"はその感情──恋愛感情をはじめに忘れてしまう
らしく、逆にそうなっていたら"アイシン病"だと分かる。



ある意味見分けやすい病気だ。



しかし、治療法や原因など詳しくは分からない。


精神病の一種ということもあるからなんだろう。





よく似ている"統合失調症"という病気があるらしいけど、
これと同じ治療法はあまり効かないようだ。














──じゃあ、もうお手上げじゃないか。











俺はそう思った。




......在り来りだけど。




でも、そこで俺の悪いクセが出る。



いつもそうだ......。





































──絵をしばらくながめていると、ふとあることを思い出した。
森崎 渉
......久しぶりに行ってみるか
俺は向かって右側の通路を進んでいく。


この先に、まだあれがあったはずだ。




相変わらず掃除されてなさそうな通路には、ごみが増えていた。


......主に吸殻すいがら


ここに来る人がいること自体が驚くけどなあ......。

でも人が少ないから吸いやすいのか。



俺はそのまま道なりに進んでいく......──。







































──俺の悪いクセ。

それは、嫌なことを一度閉じ込めること。

まあ......現実逃避げんじつとうひをしてるのと変わらないんだけど。



「それ」を現実として受け止めることが怖いのだ。



自覚はあるけど、なかなか直せそうにない。

そして、時々別の自分がでてきて、事実を突きつける。




そいつはまるで......、悠斗。



ちゃんと現実を見て、受け止めて。

その上で行動する。



俺なんかより、よっぽど偉いし、強い。


せらのこと、そらのこと、自分自身のこと。

ちゃんと整理して、どうしたいか決めて、行動。


......それがどんなに辛いことでも、普通にこなすあいつは──悠斗は、すごいと思う。


簡単にできることに思えない......。

















































──やっと着いた。

久しぶりに来たせいで、道が長くなってるように感じた。


目の前には、ほとんど外観の変わっていない映画館がそびえている。

もう廃墟はいきょと言えるほどにいたんでいるそれは、
なぜか俺を安心させる。


......誰も居ない、と分かっているから。


ドアの隙間すきまに体を滑り込ませ、静かに映画館の中に入る。


不法侵入、なんて言葉があるのは知ってる。

でもここは、もともと俺の親戚しんせきが所有していたらしいし、多分大丈夫だと思う......。


そういや小さい頃、悠斗と俺の秘密基地にしてたことがあったな......。

あの時はあんま怒られなかった気がする。


......だ、大丈夫だよな......?



俺は映画館の中を進んでいった。

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