俺がその子に会ったのは......そうだな、7、8年前になる。
渉からの紹介だった。
その頃から、せらとそらは対照的だった。
せらは物静かで大人びている感じだったけど、そらはとにかく
テンションが高かったと思う。
でもやっぱり双子というだけあって、好みとかは結構似ていた。
もちろん顔も。
そして、せら、そら、渉の順で並んでいる時、渉だけが
違っていた。
何が違うって、顔が。
好みとかは一緒にいるとだんだん似てきたりするもんだろう
から、特に気にならないけど、顔はそうじゃない。
血が繋がっていれば大抵似るものだ。
――その後4人で撮った写真には、似た顔は3つだけだった。
そしてしばらく遊んでいるうちに、急にそれを言われた。
あいつなら言いかねない。
その時は深く考えずにそう思った。
おそらく、せらに不審に思われてしまい、仕方なく言うハメに
なったんだろう、と。
そう呟いた渉は、こっちを見て察したんだと思う。
大人しくこっちへ来た。
......まあ俺とせらが一緒にいる理由なんて1つしかないからな。
......あー、ほら、やっぱりそうだろ。
せらに疑われたからだろ?
いや、ちょっと待て。
今何気に悲しいこと言ったぞ?
え??
そーいうこと、普通に言えるものなのか......?
なるほどな、そういう話か。
......何カッコつけてんだ、こいつ。
......ま、そらには言ってないってだけマシか。
2人に知られたら、さすがに母さん達に怒られる。
しばらく俺と渉の会話を聞いてた彼女だけに言う。
............せらだけに、だ。
彼女は少し驚いた表情をしている。
やっぱり、信じられないかな。
俺はそう言って、笑顔を向けた。
――それが、あなたとの時間の始まりだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。