第42話

構わないで 1
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2019/07/11 02:34
ふと、目が覚めて。

微睡む視界の中に、君の笑顔があって。



──そんな夢を、日々を、どれほど願ったのだろう。





私の目に映ったのは、やっぱり白い天井だけだった。























......でも、その日に見えたのはそれだけじゃなかった。


すぐ側に、お母さんがいるのに気づいたんだ。


お母さんは、壁にもたれるようにして眠っていた。

目の下のクマがひどく目立っていた。
相川 そら
......お、お母さん
なぜかかすれた声が出たけど、気にせず言い切った。


ここがどこなのかとか、今の日付とか、そういうものは不思議と気にならなくて。

ただ、お母さんが心配だった。




......なんの反応もなくて、私はもう一度呼んだ。

相川 そら
お母さん
......ん......なに......?
お母さんの小さな声が聞こえた。


良かった......。

そう思うのと同時に、ため息のような息を自然といた。


お母さんは、ゆっくりと目を開け、私の方を見る。
相川 そら
お......おはよう
少し小さな声になったけど、やっぱり気にしないで、言った。

すると──
そ、そら......!お母さんのこと、分かる......?
相川 そら
え......?
分かるよ、どうしたの、急に......
はあ......良かった......!
相川 そら
お母さん......?


んー......んー?うん。




様子が変だ。



なんで急にあんなこと聞くの。

まるでドラマで見たあのシーンみたい。



ほら、主人公がなにかの事故にあって、記憶をなくして......。

みたいな。





......事故......?





自分の体を見てみるけど、どこもケガをした感じはない。

布団にかくれている足もいつもと変わらない。




じゃあ、まさか、記憶が......?



......いやいやいや、まさか......ね。





そんなことを考えているうちに、部屋に見覚えのある人が入ってきた。


白衣を着たその姿は、まさに医者、という感じで。

もう一度辺りを見回して、白い壁と天井とかを確認して。



そこでやっと、ここが病院だと気付く。







医者
ちょっと、ごめんね
私に近づいてきたその人は、そう言って私の顔に触れる。

正面からライトを当てられて、少し眩しい。




チラッと見えた、首にかかったネームプレート。

そこには「川嶋 彰良」と書かれていた。
川嶋 彰良
ここがどこか、分かりますか?
相川 そら
病院、だと思います
川嶋 彰良
あなたのお名前は?
相川 そら
相川そら、です
川嶋 彰良
では、相川さん。なぜ病院に居るか、
分かりますか?
相川 そら
いえ......
川嶋 彰良
そうですか。......では、説明しますね


その言葉の後、その人はお母さんに目配せをしてから、短い話を始めた。

私は、ただそれを聞いていた。









まず、私がとある病気になっていること。



この病気は、どうやら記憶をなくしてもおかしくないものらしい。

......だから、お母さんはさっき......。



そして、その病気の治療によって、しばらく寝ている状態に
なってしまっていたこと。



そして。

その病気によって、私はここで入院しなければいけないこと──。
相川 そら
......分かりました
川嶋 彰良
急にこんなことになってしまってごめんね。
............一緒に頑張っていこう


なぜか、私には最後の言葉がとても重く聞こえてしまった。



だからだと思うけど、なんて返せばいいか分からなくて......、
小さくうなづいた。

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