その言葉を聞いて、俺は部屋を出た。
廊下に出てすぐに、
渉に引き留められた。
何をって自分で言ってるけど、さすがに渉が言いたいことは
分かってる。
その上で、言ってる。
居なくなったこと、だろ。
............あーもう。
そこはちゃんと言えよ......!
......久しぶりに低い声が出てしまった。
怒気を含んだ低い声。
それに気づいてないっぽい渉は、振り向いて歩き出した。
先程の声のまま、その渉の背中へと言う。
ぴたりと止まる渉の足。
この情報は、つい先日ネット上に公開されたものだ。
お前だって、知ってるだろ?
なあ、渉?
渉は振り向かないので顔は分からないが、おそらく絶望に近い顔だろう。
あいつは多分、そらが好きだから。
どうせまた、"現実が受け止められない"んだろうけど。
ボソリと呟き、俺は
『01-02』
と表記された診察室へと向かった。
――あなたとの時間を過ごすために。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!