それから、俺達はその部屋を出て、『01-02』の診察室へと
向かっていた。
まあ、俺は悠斗に「着いてこい」と言われて、その通りにしているだけなんだけど。
なんで先に別の部屋に行ったんだ?
......あー、診察室から川嶋が出ていくのを待ってたのか。
でも、今から診察室に行って何の意味が......。
診察室に着くと、悠斗はまたもや勝手にドアを開け、勝手に
入っていった。
何が大丈夫なんだよ......。
どんどん奥に入っていく悠斗に、俺は着いていくしかない。
そして悠斗は、奥の方にかかっていたカーテンを、やっぱり
勝手に開けた。
......そのカーテンの奥。
悠斗の肩越しに見えたのは──。
懐かしい顔だった。
......なんでこの2人、普通に会話できてんだよ......。
てか、言われたとおりにした......って、さっきまでのって、
全部、せらが......?
あんなって......。
そもそもなんで知ってるんだよ。
診察室から見てたりでもしてたのか?
俺の声をさえぎって、絶対にせらのものではない、低い静かな声が辺りに響く。
......振り向いて確認しなくても分かる。
この声は、たった数十分前に聞いたのと同じもの。
川嶋 彰良──......。
川嶋は、口元に嫌な笑みを浮かべながら続ける。
そう答えて俯いた彼女は、少し間を置いて答えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。