この思いは、なんなんだろう。
......わからない。
......忘れて、しまった。
なんでだろう、大事な思いのはずなのに。
名前が、出て、こない......。
すき......ってなに?
聞き覚えはあるけど......。
きょとんとする私に、彼は困ったような顔で続ける。
"すき"か......。
さっき。
渉の説明が終わったあと。
なんでか、渉が納得いった顔をした気がした。
......いや何に納得いくんだって感じだけど。
だけど......絵を見せてくれる前よりも
ぴったりついてきてくれるし、
"すき"っていうのを説明してくれた時も、
まるで用意してたみたいにすらすらと......。
なんか、おかしい。
けど、"すき"っていうのがそんな簡単に
説明できるものなんだったら。
名前も分からなかった私は、
もっとおかしい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!