第36話

遠くへ── 4
19
2019/04/14 08:59
映画館を出てから数分後。

俺は病院の前に立っていた。


少し照明の落ちたその入り口は、やっぱり少し怖いな......。


早足でそこを通ると、ロビーに居た看護師の方と目が合った。
森崎 渉
あ、こ、こんばんは......
看護師
こんばんは。
森崎さんですね、少々お待ちください
森崎 渉
はい
看護師は受け付けの方へと歩いていった。



......何度も通っているからだろう、何人かの看護師には、すっかり覚えられてしまっているらしい。


先ほどと同じ看護師の立つ受け付けの前で待つ。




首を回すと、様々な、病気の予防を呼びかけるポスターが見える。

ここは精神科病とうだからか、精神病のものがほとんどだ。


ゆっくりと、1つずつ見ていく......。















......と、見慣れた、いや聞き慣れた病名を2つ見つけた。

並べて貼ってあるそのポスターは、無駄むだに明るい色で、病名が示されている。




なんで、似てる病気なのに、片方しか治療法がないんだろう。



























なんて思っていると、肩を叩かれた。

......先ほどの看護師だ。
看護師
......森崎さん、いつも通り、
『01-02』の診察室でお願いします
森崎 渉
わ、分かりました。
ありがとうございます......
右手へと曲がりながら、看護師に頭を下げた。



渡された紙には、やっぱりあの医師の名前がある。








......そういや、悠斗に呼ばれてたっけな......。

そのまま居ればいいのか?


いや、さすがにそれは......。















まあ、その時に考えればいいか。





少し眠い目をこすって、ポスターが並んだ廊下を歩いていった。









































川嶋 彰良
──えー、今回のカウンセリングは
これで終わりです。お疲れさまでした
森崎 渉
......はい
川嶋 彰良
と......くに、変わったところはないですね。
このまま通院を続ければ、もう少しで治りますよ
森崎 渉
そうですか......
川嶋 彰良
薬の追加分を受け付けで受け取ってください
森崎 渉
はい、ありがとうございました
川嶋 彰良
あ、はい、お大事に......
その声をかき消すようにドアを閉める。

今日は、視界の端に映り込む、白いドアが、壁が、さっきの
スクリーンみたいに見えて、怖かった。





悠斗に呼ばれていたことなんて忘れて、俺は歩き出す。



さっさと、帰りたい......。




























......なんていう俺の思いなんて知らないだろう声に、名前を呼ばれた。









振り向きたくない。

けど、強引に振り向かされる。

































坂倉 悠斗
......久しぶり。チャット見てない、
なんて言わへんよな?































......やっぱり、こいつは苦手だ。

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