『う〜ん、、まずは、ありがとう。でも、私あなたのことよく知らないし、、』
『これから俺のこと、知ってくれれば良い。最初はさ、お互いのことを知る期間として過ごしたいんだ。俺だって、科の違う夕凪さんことを好きになって、、知らないこときっとたくさんあると思う。でも、知りたい。好きな人のことを知りたいって思うことは、皆そうなんじゃないかな。』
『っ!!』
『俺、、頑張って夕凪さんのこと振り向かせる。だから、せめて夕凪さんと一緒にいる権利が欲しい。今までは全く関わってこれなかったから、、!』
、、、、確かに、分かる。
轟くんを初めて好きになって、、
初恋をして、、
思った。
もっと、轟くんのことが知りたい。
好きなものは?
嫌いなものは?
得意なことは?
苦手なことは?
あると落ち着くものとか、1番大切なものとか、
どうしてヒーローを目指したのかとか、
どうしてそこまでエンデヴァーを憎むのかとか。
きっと辛い過去があったんだなとは思うけど、やっぱりそれまでで。
『まず、、、さ。あなたの名前を教えて?手紙には経営科としか書いていなかったし、、』
『あっ、、俺の名前は結城籟(ゆうきらい)。』
『、、、結城くん。、、、、、よろしくね。』
『えっ、、』
『私にまだ恋は分からない。でも、知りたい。結城くんは、とっても私のことを好いてくれているんだって分かる。』
『それ、、だけで?』
『うん、それだけ。でも十分な理由だと思うよ。恋とかしたこと、、多分、ないから。』
『そ、、そっか!!俺、頑張るよ。夕凪さんに好きになってもらえるように、頑張るから。』
『うん。』
そうして、私たちは「付き合った」。
彼には少し悪いことをしてしまったかもしれない。
でも、もしかしたら彼のことを好きになるかもしれない。
だって、轟くんは叶わない人。
将来、こんな私だって皆を守って、誰かと愛し合いたい。
本当の家族には小さい頃までしか愛してもらえなかったけれど、
自分の子供にはたくさんの愛を渡したい。
彼は私を好きでいてくれる。
それに応えなきゃいけない、、と私は思う。
彼と付き合って、轟くんへの恋心を忘れられたら良いなぁと思い始めている。
零:ママ。
紬:どうしたの?
零:私ね、、、付き合ったの。
紬:えっ、本当?!轟くんのよね?!
零:違う、、結城籟くんて子。経営科の。
紬:え?えっと、、どうして?零は轟くんが好きだったんじゃ、、
零:もう良いの。轟くんへの恋は叶わない。それを忘れるために、私を好きでいてくれる人と付き合うの。
紬:そう、、そういう経験も必要よね、お母さん分かったわ!!でも、それでも何か引っかかったりしたら、、それは、まだ轟くんが好きな証拠よ!自分に嘘は付いちゃダメ。良い?
零:、、、うん。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!