授業が始まって、静まった教室には誰かのこそこそ声や先生の声が響いている。
窓際の席の俺はいつものように頬杖をつきながら窓から校庭を見下ろしている。
校庭には、必死に走ってる数人の生徒達、
真面目に取り組んでいなかったのか先生に説教を食らってる生徒達の姿が目に入った。
はあ。
だめだ。
何をしてもテオくんの顔が頭から離れない。
外を見て気を紛らわせても、先生の授業をいつもよりしっかり聞いてみても。
俺の頭からテオくんのあの笑顔が離れることは無かった。
思わず、俺の口からそんな言葉が出てしまった。
隣の席の女の子が俺の言葉を聞いてこちらに顔をむけてくる。
恋。
そんなワードを聞くと、真っ先にテオくんの顔が思い浮かぶ。
そう。俺は今まで1度も 〝 恋 〟 というものをしたことがなかった。
人間誰しも、幼稚園児時代などにはいちど恋をしたことがあるもの。
でも俺は幼稚園児時代も小学生時代もいちども人に惚れることがなかった。
だから、恋がなんなのかすら分からない。
何をしたらいいのかどんなものなのか、誰かに教えてもらいたいくらい。
でも多分、このテオくんに対する気持ちも何日かしたら消えるだろう。
そう思っていた。
*
テオくんと出会った日から、あっという間に一週間が経とうとしている。
なのに。
俺の頭からテオくんの顔が消えることは無かった。
部屋でひとり、思わず頭を抱えながら呟いた。
今日は休日。
いつもなら昼過ぎ頃に起きるのに、今日は何故かすごく早起きをしてしまった。
ずっと家にいるわけにいかないし、
昼くらいになったら外にでも行こうかな。
なんて考えながら、顔を洗いに行こうと部屋から出て一階におりようとしたとき。
ピーンポーン
まだ誰も起きていない静かな家中に、インターホンの音が鳴り響いた。
めんどくさいなあ、なんて思いなら渋々玄関に向かう。
宅配便かなにかだろうと思い扉を開けた。
その瞬間、俺の鼻に外の空気の匂いと混じって心地の良い落ち着く香りが流れてきた。
ずっと嗅いでいたい、そんな香り。
俺はびっくりして、思わず勢いよく扉を閉めてしまった。
扉の向こうからテオくんの声が聞こえてくる。
なんて、バレてるであろう嘘をついて俺は慌てて部屋に戻る。
急いでクローゼットの中から服を取り出す。
極力おしゃれなものにした。
いつも学校に行くときみたいに、かみのけをせっとする。もちろん俺特有のうにヘアー。
俺のセットの仕方は、いつもよりどこか気合が入っている気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。