〜あなた視点〜
なんでさとっちゃんが…
電話したからか。
なんで今更助けを求めるのか分からないけど。
さとっちゃんが走ってくる。
体にドンッと衝撃が走る。
アイツがやった様に強く、でも優しくさとっちゃんに抱き締められていた。
きちんと息がしやすいようにさとっちゃんの肩に私の頭を乗せて。
なんでって。役に立たないと。
バンッ!とドアが音をたてて開いた。
そっちは振り返らずさとっちゃんはまだ私に言う。
早く役に立たないと。なんで止めるんだろう。
え?どういう事。
ペタンと私は尻もちをつく。さとっちゃんもそれにあわせて座り込む。
さとっちゃんは泣いていた。
本心が出る。
さとっちゃんは少し驚いた様に息を飲み、すぐ吐き出した。
後ろで皆が立っている。そして泣いている。
なんで泣くの。
なんで。私は生きてはいけない…のに。
死にたくなくなるじゃん。
はっきりとさとっちゃんは言う。
それまでの強い口調と打って変わって優しい口調になる。
さとっちゃんはそう言いながら優しく私の頭を撫でた。
涙が溢れる。駄目だ駄目だ、と思っても流れ続ける。
そこで私は死のうと思うのををやめた。
〜さとっちゃん視点〜
重い空気のまま髭男宅に着く。
大ちゃんはまだちょっと泣いてる。
楢ちゃんはやっぱりしっかりしてるな。
あなたの下の名前ちゃんも落ち着いてきたっぽく、気にしている。多分着替えとかかな。
〜あなた視点〜
なんか何から何までしてもらって申し訳無い気がしてきた。
大ちゃんは泣き止んでいた。そしてどこかに電話をかけ始める。
そう言いながら、廊下に出ていく。
私はこれから生きていて良かったと思える事が増えるかなとぼんやり考えていた。
✄-------------- キ リ ト リ --------------✄
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。