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第4話

話しかけないで 西山宏太朗
298
2020/10/01 01:57
人と話すこと







これが私にとって1番苦手なこと。






相手が話しかけてきてくれた時、






向こうの期待に答えられない。






なかなか答えられない私に







『めんどくさい』





って思うよね。みんな。






知ってる。






けど、、、、けど、、、












ガタンゴトン ガタンゴトン






満員電車。





私の降りる駅まではまだまだある。





もう何年目かになる満員電車も






もう慣れた。












……ん?










……もしかして…






太ももに違和感を感じる。






肌を滑る気持ち悪い感覚。






あなた

(もしかして…痴漢…!?)






気づいた時にはもう手はスカートの中に入ろうとしていて







普通の人でも声が出せないこの状況。





辛うじて助けは呼べるのかもしれないけど。






私には絶対に無理だった。






……気持ち悪い





あなた

(おねがいっ…誰か助けてっ…)

たろり
たろり
……





私とその手の間に誰かが立った。






急な状況に振り向くと私よりも20cmは大きい男の人がいた。






たろり
たろり
大丈夫?





優しい声だった。






あなた

……っ






『ありがとうございます』





って言いたい…言いたいのにっ…






声が出せない。






駅員 次は○○〜





たろり
たろり
大丈夫だからね。ちょっとおいで。






そう言って男の人は私の手を掴むと






人の流れに乗り電車を降りた。






そのままあまり人のいない






ホームの端へ連れていかれる。





たろり
たろり
ごめんね。急に。大丈夫だった?
あなた

……っ




話せないっ…





たろり
たろり
声、出ないよね。怖かったね。





そう言って優しく背中を撫でてくれる。






柔らかくて温かいその人の笑顔に涙が出る。





たろり
たろり
泣いていいよ。大丈夫。大丈夫。
あなた

……っ…

たろり
たろり
よく耐えたね。頑張ったね。



ありがとうって






伝えたいっ…





あなた

あ……のっ…

たろり
たろり
っ!どしたの?
あなた

あり…が…と…ございま…す…

たろり
たろり
お礼なんていいんだよ。
あなた

私…上手く…はなせな…いっ…

たろり
たろり
うん。いいよ。無理しない無理しない。
あなた

……あの…お名前…

たろり
たろり
あ!ごめんね!西山宏太朗っていいます!
あなた

……西山さん…ありがとうございました…

たろり
たろり
いいんだって〜!
たろり
たろり
この後時間ある?
あなた

へ?

たろり
たろり
僕仕事帰りなんだけど、ちょっとお散歩しようと思って!
たろり
たろり
気持ち落ち着くまで一緒にお散歩しない?
あなた

……コクン

たろり
たろり
やった!じゃあ行こっか!







はい!ありがとうございましたっ!





たろりの笑顔ってなんか気持ちがふわってなるんです…(わかってぇぇ)





辛いことあった時とかいつも救われてます…





私も誰かにとってそんな存在になれるといいなぁ〜





ステラ✩.*˚

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