遠くで声が聞こえる
最寄り駅に着き、お金を払って急いで自宅に向かった。
右ポケットに入れたピアスを見ながら昨日のことを思い出す
が。
…おかしい。
思い出せない
彼女の顔が。
今日の朝見たばかりの、彼女の顔が。
それに、自分が降りた駅も、入った店の名前も、彼女のマンションの場所も。
ここに来て、アルコールが回ってきたのか。
気づけば目の前にあった自宅のドアに拳をついていた。
…手掛かりは、ピアスだけ。
見つけなきゃ。
たった一晩だけ愛した、彼女のことを。
そんな使命感が、僕の心の中を埋めつくした瞬間だった。
必ず見つけるから
待ってて。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。