パァァァ(緑の光と効果音)
そう、私は妖の治癒魔法が使える。
始めて力が発動したのは6歳の時。その時、多くの妖に私がこの力を使える事が知られてしまった…。
私の両親は私の事を少し変な子だと思いつつも、変わらず愛してくれた。
幼ながらも、私はもう妖の事を言うのはやめた。もう全て構って欲しさだったという事にした。…両親達にもうこれ以上心配させたくなかったーー。
ーーけれど、私が治癒魔法が使えるのを妖に知られれば、襲われそうになったり、攫われそうになったりする。
……昔、妖に攫われた事がある。
ーー暗い中、1人でとても怖かった。寂しかった。
『早くお家に帰りたい』
そう思った時、一つの大きな手が私を救ってくれた。
「もう大丈夫だよ」
最後にそんな言葉を聞いた。とても優しい声だった。この人になら身を任せてもいいと思えるくらいに…。 その後の事はあまり覚えていない。
今考えたら、あの人も妖だったのかもしれない…。しかし、もうあの人の顔も温もりも思い出せい。どんなに両親に訴えても探しだすことはできないーー。
両親が警察に捜索届を出しても全く私が見つからず途方に暮れていた時、偶然玄関のドアを開けたら私が横たわっていたらしい。
……警察は十年前のこの事件を誘拐事件と処理したが、私は断言できる…。
ーー十年前のあの日、私を誘拐したのは顔も分からない妖だった事。そして、あの大きな手が私を救ってくれた事。
あの日から私は誰にも妖が見える事、治癒魔法が使える事を隠して生きてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!