集中を紛らわす為に、帰ったら映画を観た。
恋愛ものは何となく気が引けて、昔小説で読んだ、「人魚の眠る家」という映画を手にとった
娘が脳死になってしまう。
母は生きていると主張するが、父は生きてはいないと否定する。
すれ違っていく気持ち。
登場人物の心情が手に取るように伝わってくる。
映画に魅入って周りの音が分からなくなった時、
ふとマナーモードにしていたスマホが何度も何度も震えている事に気がついた。
バイブレーションの音が気になると、映画が頭に入って来ない。
リモコンのスイッチを押して、一旦映画を止めた
〈 LINE上 〉
謝罪の文が送られてくる、
その直後「あなたの下の名前さんが送信を取り消しました」の文字。
もし…あなたの下の名前ちゃんが気が付かずに、最後まで文章を送っていたら。
文末の言葉が頭をよぎる。
気を紛らす為に付け直したはずの映画は、全く頭に入って来ない。
「私の事を、」
送信を取り消されてしまった、その言葉の続きはどう考えても出てくる事は無かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。