足が折れ、自由には動けない今、
私には何が出来るのかと考えていた。
それはひとつしか思い浮かばない。
出久の援護だ。
私が見るに出久とマスキュラーの個性は似ている。
私がマスキュラーだけの個性を消せれば出久が勝てるはず。
ただえさえ自分を傷つけるかのように個性を使う出久なのだから、私がどうにかしてあげないといけない。
個性のコントロールが全く効かない私は出来るだろうか。
失敗したら出久はどうなるのだろうか
個性なしの力ならマスキュラーが上、もし失敗したら…
そう考えると全く個性が使えなくなって、腕がプルプル震えていた。
「楽しめ!!」
「祭りなんだから!!」
「自由にすればいい!!」
「お前にならできる」
色々な言葉が脳裏によぎる。
そして私はふと思う。
何故個性を使おうとする時だけ楽しまなかったのだろう、と。
喧嘩は好きだ。だって強いから。
みんなと話すのも好きだ。大好きだから。
遊ぶのも好きだ。楽しいから。
個性を使うのは好きじゃない。難しいから。
制御出来ないのが嫌だった。みんなみたいにできないのが嫌だった。
まるで過去の私みたいじゃないか。
ガラクタに過ぎないタダのお人形のようなものじゃないか。
そんな気がしてままならなかった。
けどそうだよね。
出来ないのなんて当たり前だよね。
だって、
私自身が楽しんでないんだからさ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。