第22話

ラベンダー
135
2021/02/14 14:57


ある日の土曜日。


 



わたしの仕事はお休みで









はるくんはレコーディングからの







YouTube撮影だから









1人だけの休日を過ごしていた。









彼が仕事で頑張っているのに、








わたしだけダラダラしたり











遊びにいったりする気分にもなれなくて…。







家で少し大がかりなお掃除でもしようかなと










準備を始めたとき、わたしのスマホが震えだした。






美麗
美麗
…はるくんからだ



なにかあったのかな?





わたしはスマホの通話ボタンをタップした。




晴人
晴人
あ、美麗?
美麗
美麗
…はるくん、どうしたの?
晴人
晴人
今、家?
美麗
美麗
そう。これから大掃除しようかなと思ってたんだけど…
晴人
晴人
そうなんだ。俺、今日はもう終わりそうでさ
美麗
美麗
えっ?




もう?





時計を確認すると、まだ15時前だ。




美麗
美麗
もう今日のお仕事は終わりなの?
晴人
晴人
そう。4時前には帰れるから…
綺麗なラベンダーが咲いてるらしくて、一緒に見に行こっ?




予想外の、はるくんからの提案。






10日程前から咲き始めたラベンダーは、







ちょうど見頃で満開になっているところが








ほとんどだ。




美麗
美麗
うん!行きたい!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




それから、はるくんは本当に4時前に帰ってきた。



玄関のドアを開けるなり



晴人
晴人
美麗〜!もう出られそう?



と、わたしを呼んで家から連れ出し







わたしはそのまま車の助手席に乗せられた。







はるくんの運転でお出かけするのは








久しぶりだから嬉しいんだけど…




美麗
美麗
せっかく早く仕事終わったのに、
体休めないで大丈夫?



バンド活動とYouTube活動の両立。





ものすごく体力勝負に違いない。





晴人
晴人
大丈夫だって!笑
早くしないと、ラベンダーの花散っちゃうじゃん笑






はるくんはそう、笑顔で答えた。









それにしても…どこに行くんだろう?









窓の外の景色は









もう既に見知らぬ場所になっていて







わたしは少し不安になった。
美麗
美麗
…はるくん…いったいどこまで行くの?
晴人
晴人
内緒。笑


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





そして、ようやく着いたらしい。





わたしとはるくんは、車から降りた。





美麗
美麗
…わぁ〜!
晴人
晴人
ふふ笑
綺麗やろ?笑
美麗
美麗
うん、すっごく




はるくんが






ラベンダーの木を見上げるわたしの手を繋いだ。




わたしはラベンダーから目が離せなかった。






そんなわたしを見て






はるくんが満足そうに笑った。



美麗
美麗
晴人
晴人
……ヤバ…緊張してきた
美麗
美麗
え?




わたしの隣にいたはるくんが






わたしの前に立った。








それから、愛おしそうに









わたしの頬にそっと触れて








そのままわたしの顔を覗き込んだ。





晴人
晴人
…2ヶ月前…あそこで美麗を見つけた時…
他にも人がいたのに、俺…美麗だけがすぐ目に飛び込んできた。
美麗
美麗
晴人
晴人
…ほんとだよ…?




無言のわたしに、






はるくんは困ったように眉毛を下げて








笑いながら言った。




晴人
晴人
可愛いくて綺麗な人だなって思った。
最初はそれだけだった…でも
こんなにも好きになるなんて正直思わなかった
美麗
美麗
…うん
晴人
晴人
もう、ダメなんだよ。俺…
美麗
美麗
え、ダメって…?
晴人
晴人
…美麗がいない人生なんて…それに




はるくんは、わたしの頬と手の間から









自分の手を抜き取ると








今度はわたしの手を握り








少しだけわたしを引き寄せた。
晴人
晴人
これから先の…美麗の想い出の中全部に…
俺がずっと居たい。


ちょっと待って…



晴人
晴人
俺の言ってる意味…分かる…?




分かんない…






そんなの、急に言われても分かんないわよ…








わたしの頭の中はパニックになっていた。





晴人
晴人
俺は…矢野晴人は…




はるくんの動く唇が







スローモーションのように見えた。








自分の心臓の音がうるさい。







わたしはこれからはるくんがくれる言葉を








きちんと…受け止めなくちゃいけないのに

































晴人
晴人
美麗を…一生大切にする事を…誓います



はるくんの顔が見たいのに…





涙の粒がそれを邪魔していた。




晴人
晴人
今すぐにはできないけど…





わたしは、はるくんの瞳をまっすぐ見つめた。



























































晴人
晴人
美麗…俺と結婚して下さい






はるくんのその言葉と同時に






わたしの目から大きな涙が溢れ落ちた。

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