わたしはディスプレイを見ながら呟いた。
自分の親友がママになる。
その幸せなニュースにわたしは心から喜んだ。
「そうかぁ…」と言ったまま無言になってしまった
はるくんをチラッと見ると
何か考えてるような顔をしていた。
わたしは、はるくんの顔を覗き込んだ。
なんだか言い難そうにしている。
まったくそんなことを言う
雰囲気じゃなかったところに
そんなことを言われてわたしはだいぶ驚いていた。
一体、どうしちゃったの?
わたしはマジマジとはるくんの顔を見つめた。
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ダメだ!ダメだ!ダメだ!
こんなんじゃダメだ!
俺のことをじーっと見つめる美麗を
誤魔化すように抱き寄せて
腕の中にすっぽりおさめた。
美麗はそう言って
大人しく俺にされるがままだった。
美麗のツヤのあるサラサラの髪の毛を撫でながら
なんとなく落ち込んだ気分になった。
なんでかっこよく決められないんだろう…
そんな男が
この先、美麗の事を守っていけるのか。
この間の琴子の事もあって
余計に自分自身不安になった。
そんな事を考えてたら
俺腕の中で、美麗がクスッと笑った。
美麗のその言葉で俺は
ハッと我にかえった。
美麗が俺の顔をのぞき込んだ。
思わず美麗を抱く腕に力が入った。
…あぁ…
美麗にはお見通だったんだ。
俺が何を考えてたのか
何に…焦っていたのか。
「結婚」という二文字を
なかなか言い出せない俺の耳元で
美麗が優しく、でもはっきりと言ってきた。
ほんと…バカなの…?
なんで、そんな…。
もっとわがまま言って、俺を困らせてよ
美麗がふふっと笑った。
どうしようもなく…
そんな美麗の笑顔が見たくなった。
俺はそう言うと、首に回った美麗の腕を外した。
自分の目の前に美麗の丸くて柔らかい
ほっぺたを両手で包み込んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!