軽く息を乱した彼女は
悔しそうな顔でこちらを見ていた .
これからわかる通り勝敗は俺の勝ち .
圧勝ではなく , 接戦だったけど
すごく楽しかったし , 強かった .
もっとお昼ご飯っぽいものを
言った方が良かったかな
今沢山体を動かしたから
どうしてもチキンを頬張りたい .
普通男女で出かけた時は
男の方がお金を払って
ご飯を食べさせるのだと思っていたし
何だか 良いとは言えど
少し申し訳なさが残る .
自虐するように笑いながらそういう彼女 .
正直歳もそんなに離れてないし
老いたようには到底見えない .
そんなちょっと変な彼女に
つい笑みがこぼれる .
ちょっとしたタメ口を
軽く使ってしまったのもあって
その場を早足で離れる .
ちょこちょこと走り気味に
俺の後を追う彼女に
少し可愛げを感じたのは内緒 .
彼女が連れてきてくれたチキン屋さん .
聞いたことがないない名前だったけど
それはそれは美味かった .
まだ知ったばかりの俺さえ
誰にも知られて欲しくないと思ったくらい .
ジュニたちも連れてこようかな ,
なんなら , …
社会人だし ,
急に電話かかってきては
急に仕事を任されることも
無くはないのだろう .
コソコソ喋りながら
やっぱり気にしちゃうのか
お店を出ていった彼女 .
俺はその間にもチキンを頬張る .
俺のことだろうか .
" 何 !? " と呼びかけていたし
親しい間柄なのだろう .
御家族か , それとも会社の同僚か
まぁなんでもいいか .
俺はそう思いながら
新しいチキンに手をかけた .
申し訳なさそうな顔をして
帰ってきた彼女を見た時 ,
俺は子供心からか
小さなイタズラをしたいと思った .
そう思ったらつい口に出てしまう訳で .
柄にもないことを言ったけれど
目の前で顔を徐々に赤くしていく彼女が
面白くて , 可愛かった .
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。