もう、忘れられてしまうのは慣れちゃったよ
こういう時は、無理に思い出させようとしなくていい
どう足掻いても、不可逆的なことだから
私の個性の代償はこれ
なぜか、特定の人の傍で個性を使いすぎる・特定の人に個性を使い続けると、存在全てを忘れられてしまう
初めてその代償が現れた人物は、お母さんだった
お母さんは今でも、私を知らない
私は1人、声を殺して、ただひたすらに泣いた
思い出してみると、忘れられてしまう度、私は泣いていた
泣くことしか出来ない赤ん坊のように、抗えない運命に従って
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私は嘘を吐いた。
本当はとても苦しい..
忘れられるのも、心を偽るのも、自分を隠すのも
私はそのまま振り向き、少し俯いて朝ごはんの準備を始めた
施設には子供も多いから、ご飯の量はとても多い
朝と晩はこうして手伝っているけれど、昼は学校もあるから、休みの日以外は矢摩さんが1人で作っている
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施設から近い駅の電車に乗って、2駅程移動すると、大きなショッピングセンターがある
少し買い揃えるだけなうえ、お米1つならこのように大きなお店に来る必要はない。
だけど、今日はここでなきゃ買えないものを買いに来たのだ
深呼吸をして、思い切ってショッピングセンターに足を踏み入れる
入ると、すぐに見えたのはお店...ではなく、人混み
人の多さに吐き気がしてくるけれど、どうにか耐えて足を進める
実はと言うと、私は人混みが苦手なのである..
(苦手そう、、と思っていた?そ、それはそれで悲しいですね..)
お店の場所が書いてある地図的なものをまじまじと見つめ、店の場所を把握する
今日ここで買い揃えたのは、ある程度教材が入りそうなリュックと、ちょっとした文房具などだ
突如声をかけられ、少し驚いてしまった
だけど、聞き覚えのある声だったので、すんなりと振り向くことが出来た
以前持っていた緑谷くんのイメージは、同じクラスの爆豪勝己くんに目をつけられた、臆病な子。
自分の意思だってまともに伝えられないような子だと思ってた。でも、卒業式の日、初めてイメージが変わった
意思なんて、とても素直に優しく言ってくれて、嬉しかった
私なんか、意思を伝えるどころか、持つことだって上手くできないのに..
だけど、この日、もう1つイメージが増えた
緑谷くんは所謂..お人好しさんである
きっと、困っている人からは目が離せないと思う..ねっからのヒーロー気質だ
確か、雄英を目指しているとも聞いたことがあるし..ぴったりだ。
私はこの時、あの笑顔が全世界に普及すればな、と思った
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。