第7話

雛菊、花言葉はお人好し
1,809
2020/10/14 14:14
琴花 あなた
悠哉..?わ、私..琴花あなた...
琴花 あなた
あなたと同じ、この施設で一緒に育ったでしょ..?
施設の子供
そうだよ、あなたお姉ちゃんだよ?
悠哉お兄ちゃん..っ
奏生 悠哉
ごめん..お前らは覚えてる、けど...
奏生 悠哉
お前は知らない
琴花 あなた
ッ!
琴花 あなた
そ、そっか...
施設の子供
な、なんで?!悠哉お兄ちゃん、あなたお姉ちゃんのこと忘れちゃったの?!ねぇ、なんで?!
琴花 あなた
辞めてあげて、悠哉が困っちゃうから
施設の子供
でも、あなたお姉ちゃんが可哀想..ッ
琴花 あなた
私は大丈夫だよ(ニコッ
もう、忘れられてしまうのは慣れちゃったよ
こういう時は、無理に思い出させようとしなくていい

どう足掻いても、不可逆的なことだから
琴花 あなた
じゃあ、あなたは私のことを知らなくてもいい。
だから、今から知ってくれると嬉しいな(ニコッ
琴花 あなた
私は琴花あなた
よろしくね、悠哉
奏生 悠哉
う、うん..
琴花 あなた
さぁ、みんな先に中入ってて
いつも通り片付けして、歯を磨いてね
施設の子供
わ、分かった..



私の個性の代償はこれ
なぜか、特定の人の傍で個性を使いすぎる・特定の人に個性を使い続けると、存在全てを忘れられてしまう
初めてその代償が現れた人物は、お母さんだった
お母さんは今でも、私を知らない
琴花 あなた
(忘れられてしまうのは慣れたよ..でも)
琴花 あなた
この感情には慣れないなぁ..ッ
私は1人、声を殺して、ただひたすらに泣いた

思い出してみると、忘れられてしまう度、私は泣いていた


泣くことしか出来ない赤ん坊のように、抗えない運命に従って





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矢摩 柊太
あなたちゃん、大丈夫かい..?
琴花 あなた
はい、大丈夫です(ニコッ
矢摩 柊太
....無理、しないでね
琴花 あなた
してません、だから、大丈夫です
私は嘘を吐いた。
本当はとても苦しい..

忘れられるのも、心を偽るのも、自分を隠すのも
矢摩 柊太
ッ..そう、かい...
矢摩 柊太
あ、あと..子供たちを守ってくれてありがとうね
本当に、あなたちゃんに任せて良かったよ
何か、困ったことがあったら言ってね
琴花 あなた
はい、ありがとうございます
私はそのまま振り向き、少し俯いて朝ごはんの準備を始めた
施設には子供も多いから、ご飯の量はとても多い


朝と晩はこうして手伝っているけれど、昼は学校もあるから、休みの日以外は矢摩さんが1人で作っている
琴花 あなた
今日..少し買い物に行こうと思っています
琴花 あなた
高校に必要な物を揃えようかと
矢摩 柊太
うん、事前の準備は必要だからね
気をつけて行ってきてね
琴花 あなた
はい
琴花 あなた
あと..そのついでに、少し買い足しもしようと思って
琴花 あなた
だから、何か必要なものはありますか?
矢摩 柊太
そうだね..なら、お米を頼みたいけど..1人じゃ重いよね
琴花 あなた
いえ、構いません
お米くらい1人で持てます(ニコッ
矢摩 柊太
それは頼もしいね
なら、お願いするね
琴花 あなた
はい










施設から近い駅の電車に乗って、2駅程移動すると、大きなショッピングセンターがある


少し買い揃えるだけなうえ、お米1つならこのように大きなお店に来る必要はない。

だけど、今日はここでなきゃ買えないものを買いに来たのだ
琴花 あなた
ふぅ..
琴花 あなた
よしっ
深呼吸をして、思い切ってショッピングセンターに足を踏み入れる


入ると、すぐに見えたのはお店...ではなく、人混み
人の多さに吐き気がしてくるけれど、どうにか耐えて足を進める
実はと言うと、私は人混みが苦手なのである..

(苦手そう、、と思っていた?そ、それはそれで悲しいですね..)
琴花 あなた
えっと...
お店の場所が書いてある地図的なものをまじまじと見つめ、店の場所を把握する












琴花 あなた
これでよし...
琴花 あなた
あとはお米、かな..
今日ここで買い揃えたのは、ある程度教材が入りそうなリュックと、ちょっとした文房具などだ
琴花 あなた
(スーパーは1階、だよね..)
琴花 あなた
(今日買った物は全部リュックに入れて、背負っちゃおう)
琴花 あなた
お米..ちょっと美味しいやつにしよっかな♪
???
あ、琴花さん!
琴花 あなた
(ビクッ!
琴花 あなた
は、はい..!
突如声をかけられ、少し驚いてしまった

だけど、聞き覚えのある声だったので、すんなりと振り向くことが出来た
琴花 あなた
こ、こんにちは、緑谷くん(ニコッ
緑谷 出久
こんにちは!琴花さん!
緑谷 出久
卒業式ぶりだね
琴花 あなた
そうだね
緑谷 出久
今日はお買い物?
お米..って聞こえたけど..?
琴花 あなた
ッ..(聞かれていた..)
琴花 あなた
う、うん
琴花 あなた
ちょうど無くなってきてたから、買おうと思って..
緑谷 出久
そうなんだ!
あ、でも、他にも買い物してたんだね!
琴花 あなた
うん
緑谷 出久
僕でよければ家まで運ぼうか?ほら、お米って重いし!(ˊᗜˋ)
以前持っていた緑谷くんのイメージは、同じクラスの爆豪勝己くんに目をつけられた、臆病な子。

自分の意思だってまともに伝えられないような子だと思ってた。でも、卒業式の日、初めてイメージが変わった


意思なんて、とても素直に優しく言ってくれて、嬉しかった

私なんか、意思を伝えるどころか、持つことだって上手くできないのに..



だけど、この日、もう1つイメージが増えた
琴花 あなた
わ、悪いよ..家、遠いし💧
緑谷 出久
全然大丈夫だよ!
緑谷 出久
それに、遠い方がトレーニングになる..((ボソッ
琴花 あなた
え、?
緑谷 出久
あっ、ううん!なんでもない!
緑谷くんは所謂..お人好しさんである


きっと、困っている人からは目が離せないと思う..ねっからのヒーロー気質だ


確か、雄英を目指しているとも聞いたことがあるし..ぴったりだ。
琴花 あなた
(例えるなら雛菊、かな..)
琴花 あなた
そっか..
琴花 あなた
あ、でも。本当に大丈夫だよ(ニコッ
こ、こう見えても私、力には自信あるから..!!
緑谷 出久
そっか...あ、こっちこそ、無理に頼んだみたいで..ごめんね💧
琴花 あなた
ううん、気持ちはとても嬉しかったよ
琴花 あなた
じゃあね(ニコッ
緑谷 出久
うん、またどこかで!(ˊᗜˋ)
私はこの時、あの笑顔が全世界に普及すればな、と思った























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