しばらく無言で雄英の校舎を見据えていた私は、前方から歩いてくる人に遅れて気づいた
根津さんはくるっと右回りし、校舎の方へと歩いていった
私もその後を静かについて行った
雄英の校舎内は、見た目よりも広く見えた
背の高いドア
整った最新設備
個性に特化したユニバーサルデザインだとひと目で分かった
あの事後、私は住む家がなく、さまよう羽目になるところだった
しかし、根津さんは私に住む家を与えてくれた
1人で暮らすには十分な家と、
最低の家具や設備も付けて
正直、なぜここまでしてくれるのかは分からない
ただ、私を雄英に引き入れたいが故の行為なのか
ただのお人好しなのか
だけど、後者だとすれば、雄英なんてすぐに破綻してしまうだろう
とまぁ、雄英について、世間話などを挟みながら紹介していただいた
根津さんはしばらく黙った
それについては特に何も思わず、私は根津さんの真意を探るように見つめていた
私は利用される側には絶対になりたくない
そう決めていた
そんな都合のいい存在になるつもりはないし、どうせなら利用してやりたいから
今日、雄英を見学して、改めて決意が固まった
この学校なら、きっと大丈夫だと思えた
私に振り回されても、きっと彼らなら、
「どうにか攻略してやろう」
そう思うと思ったから
だって、授業を受ける彼らの表情はとても真面目だった
その中に見つけた。
真面目な表情に隠れた
"楽しさ"を
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。